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「医療・介護等支援パッケージ」のポイント解説
医療機関における賃上げの意義と経営課題への対応
令和8年度の診療報酬改定や令和7年12月成立の補正予算に盛り込まれた「医療・介護等支援パッケージ」は、単なる支援策ではなく、地域医療の構造そのものを強化するための包括的な政策です。しかし、賃上げは単なる給与引き上げではなく、医療機関の経営戦略や組織運営に深く関わるテーマです。経営層には、賃上げを「未来への投資」として捉え、組織改革と結びつけていく視点が求められます。
医療の質を支える最大の資源は「人」です。医療従事者の確保は全国的な課題であり、特に地方では賃金水準が採用競争力に直結します。賃上げを行わない場合、優秀な人材の流出や採用難が生じ、結果として医療提供体制の弱体化につながる可能性があります。
また、職員の生活が不安定になれば、モチベーション低下やメンタル不調を招き、医療の質にも影響します。賃上げは、離職防止・採用力強化・組織の安定化につながる「経営リスクの低減策」としての側面も持っています。経営層は、短期的な負担ではなく、長期的な組織価値向上のための投資として位置づける必要があります。
賃上げを適切に実施するには、労務管理の精度が不可欠です。制度理解の不足や運用ミスは返還リスクや職員の不信感につながるため、経営層が主体的に関与する必要があります。
(1)対象職種の明確化とコンプライアンス対応
賃上げ財源には対象職種が定められており、誤支給は返還の対象となります。看護職員やリハビリ専門職などが対象となる一方、医師や事務職は対象外となるケースが多く、制度理解が不可欠です。部署横断の連携とチェック体制の構築が求められます。
(2)就業規則・給与規程の整備
賃上げは、給与規程や就業規則の見直しとセットで進める必要があります。基本給表の改定、手当の整理、昇給ルールの明確化、評価制度との整合性など、制度全体の透明性を高めることが重要です。規程整備は職員の安心感にもつながります。
(3)労働時間管理と財務健全性の両立
賃上げを行っても、時間外労働が増えれば人件費は膨らみ、財務を圧迫します。働き方改革と一体で取り組むことが不可欠であり、業務効率化、シフト適正化、ICT活用、36協定遵守など、多面的な改善が求められます。
(4)評価制度の整備と組織文化の醸成
公平で納得感のある評価制度は、賃上げを持続可能にする基盤です。評価基準の明確化、管理職の評価スキル向上、フィードバック文化の定着など、制度運用は組織文化の成熟度を映し出します。
賃上げは、採用力強化、働き方改革、経営安定化、職場環境改善など、複数の改革を同時に進める契機となります。単独施策では効果が限定的ですが、賃上げと組織改革を連動させることで相乗効果が生まれます。
賃上げを成功させるには、経営層の明確なメッセージとリーダーシップが不可欠です。トップが「働きやすい職場づくり」を掲げ、組織全体に方向性を示すことで、職員の信頼や一体感が生まれます。また、制度整備や労務管理を現場任せにせず、経営課題として捉える姿勢が求められます。
「支援パッケージと労務管理の関係(整理)」
(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 日野 智宏 社会保険労務士)