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第86回勤改センター通信『年金制度改正法が成立しました!」令和7年6月20日公布

 

『年金制度改正法が成立しました!』令和7年6月20日公布

改正の目的は、働き方や男女の差等に中立で、ライフスタイルや家族構成の多様化、高齢期における生活の安定を図るため等としています。今回はおおまかな改正点をお知らせいたします。

 

1.社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大

(1)短時間労働者の加入要件が緩和され、週20時間以上働くパート・アルバイトは、賃金要件や企業規模に関わらず、原則として社会保険加入対象となります。【2027年10月から段階的に実施】

賃金要件(月額8.8万円=年収106万円相当)が撤廃され、いわゆる年収106万円の壁がなくなります。(公布から3年以内)

企業規模要件が段階的に撤廃され、働く企業の規模にかかわらず加入するようになります。

51人以上(現行)→36人以上(2027年10月)、21人以上(2029年10月)、11人以上(2032年10月)、最終的に全企業対象(2035年10月)

(2)事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例措置【2026年10月から】

企業規模要件の見直しにより新たに社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象となる短時間労働者に対し、保険料負担割合を変更することで労働者の保険料負担を軽減できることとし、労使折半を超えて事業主が追加負担した保険料について、年間国などがその全額を支援します。

2.在職老齢年金制度の見直し【2026年4月から】

働きながら年金を受け取る高齢者の支援策として、支給調整の基準額が月50万円から62万円に引き上げられます。これにより、高齢者が「働き控え」することなく就労できる環境が整います。

3.遺族年金の見直し

(1)遺族厚生年金の男女差解消のため、18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付の対象とし、60歳未満の男性を新たに支給対象とします。また、給付期間が短縮される代わりに、有期給付加算の新設による遺族年金の増額や将来の年金額に反映される死亡分割制度、収入要件(年収850万円未満)の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直しを行うこととなっています。

 

現在の仕組み

・女性 30歳未満で死別 5年間の有期給付

    30歳以上で死別 無期給付

・男性 55歳未満で死別 給付なし

    55歳以上で死別 60歳から無期給付

 

変更後の仕組み

・男女共有

    60歳未満で死別 原則5年間の有期給付

             (※配慮が必要な場合は5年目以降も給付を継続)

    60歳以上で死別 無期給付(現行どおり)

 

※障害状態にある方(障害年金受給権者)、収入が十分でない方に対するものです。

 

【男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施】

(2)子に支給する遺族基礎年金について【2028年4月から】

遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくする子に対する支給停止を見直し、子が遺族基礎年金を受け取れるようなります。

4.標準報酬月額の上限引き上げ【2027年9月から段階的に実施】

現在65万円の上限を段階的に引き上げ、68万円(2027年9月)、71万円(2028年9月)、75万円(2029年9月)までに引き上げます。高収入者の年金額が実際の賃金に応じて受け取れるようになります。

今後の留意点

本改正は段階的施行方式で進められます。各時期における具体的な対応や就業規則の見直し、職員説明などが不可欠です。特に短時間労働者の社会保険加入拡大により、給与制度・人件費の見直し等の検討が必要となります。

※その他の改正、詳細については、厚生労働省ホームページ「年金制度改正の全体像」をご参照ください。

 

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 安酸 早苗 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2025年8月号(No.842)掲載記事はこちら