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第82回勤改センター通信『令和7年4月の法改正;65歳までの雇用確保が完全義務化』

社会保険分野の法律は、毎年のように改正があり、確認が大変ですが、新年度の改正点のうち、注意を要すると思われる「定年65歳の義務化」について見ていきます。

2025年3月末までは、2013年の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」改正時点では、老齢厚生年金の報酬比例部分、いわゆる2階部分の支給開始年齢以上の年齢の方について、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められていましたが、その経過措置も2025年3月31日をもって終了し、すべての企業は、

〇65歳までの定年引き上げ

〇定年制の廃止

〇65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

のいずれかの措置を講じる必要があります。

「定年65歳の義務化」と聞くと、「定年年齢を65歳にしなければいけない」と誤解しがちですが、定年年齢を65歳にする方法以外で対応することも可能です。

したがって、60歳定年制を維持したまま、希望者を65歳まで継続雇用する制度でも法令上の要件を満たせます。

なお、2025年4月の制度改正に向けて、

〇定年を65歳未満に定めている

〇65歳までの継続雇用制度を導入する

(継続雇用制度の場合、適用者は原則として「希望者全員」となるため)
〇高年齢者の労働条件を変更する必要がある

このような場合、就業規則の変更が必要なこともあると思われ、注意を要します。

 

また、2025年4月からは、60歳以降も働き続ける労働者の大幅な賃金低下を防ぐ意味で給付されていた高年齢雇用継続給付が見直され、従来の制度では、60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合、賃金の最大15%が支給されていましたが、2025年4月1日より、60歳以降の支給率が最大10%に縮小されます。賃金低下率が64%超75%未満である場合は、支給率は逓減されます。

65歳までの雇用確保の義務や70歳までの定年引上げ、定年廃止などが努力目標として設けられたことで、65歳以上の高年齢者が働きやすい環境が整いつつあることが見直しの理由とされています。

事業主に支給される給付金の縮小は、該当する従業員の収入に直接影響を与える可能性があるため、賃金制度の見直しを含め、早めの対策検討が必要です。

 

このように、定年年齢をめぐる状況は変化していますが、では何歳まで働きたいか、ということについては、働く人ひとりひとりで異なっていると思われ、

〇60歳以降は余生を楽しみたい

〇体が健康なうちに、趣味やボランティアなど幅広い活動をしてみたい

〇老後はできる限り長く、夫婦での時間を大切にしたい

〇体力的・能力的に60歳以上は働くのが厳しい

〇60歳までには老後の生活費を蓄えられる

といった、60歳でリタイアを希望する人がおられる一方で、

〇住宅ローンの返済などで、経済的に65歳までは働く必要がある

〇社会貢献することで生き甲斐を感じたい

〇仕事が好きなので生涯現役で頑張りたい

などの理由で、60歳を過ぎても働きたい方もおられると思います。

働く人それぞれの健康状態や能力、希望に合わせて選択できるよう、柔軟な対応をお願いします。

 

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 八木宏敏 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2025年4月号(No.838)掲載記事はこちら