安心して働ける快適な職場を作りましょう!!
『 医師の働き方改革 』
2019年から時間外労働規制の適用が猶予されていた、医師・建設業・自動車運転業等の5年間の猶予期間が終了します。運送業に関しては、従来から新聞等にしばしば取り上げられてきた話題ですが、これは時間外労働規制とそれに拍車をかける人手不足が、たちまちにして事業者や生活者に影響するからなのでしょう。物流の停滞は事業者にとって影響は深刻です。
では過労死レベルの勤務をこなすことで、日本の医療の質と量を担ってきた医師の場合はどうなのでしょう。医師の時間外労働規制等の働き方改革は、患者等(医療受益者)にマイナスの影響がなければ一般的な話題となりにくい側面を持っています。しかし長年の懸案事項であった医師の長時間労働があり、それに頼るかたちで医療サービスが維持されてきたことは事実です。
労働基準法は取締り法規であり強行法規という性格を持ちます。その第1条には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなくてはならない」と記されています。時間外労働は36協定を締結したうえで月45時間・年360時間が上限であり、特別条項を締結して年720時間(法定休日を除く)以内が法に定める原則です。医師は、その業務の特殊性から今後も特例が設けられますが、A水準とよばれる時間外労働960時間(休日含む)が原則です。しかし地域医療はどのように確保するのか、という重要な課題がありB水準・連携B水準が設けられ時間外労働1,860時間(休日含む)が法定内となります。また医師の集中的技能向上のためにC-1・C-2水準があり、これも時間外労働1860時間(休日含む)も法定内となります。A水準以外は指定を受けなければなりませんし、B・連携B水準は2035年までで廃止予定、C水準に関しても将来的に縮減の方針です。
この『医師の働き方改革』では勤務医の時間外総労働時間の上限のみではなく、連続労働時間、労働時間インターバルと代償休息、また若い勤務医死亡で最近問題になった“自己研鑽”は勤務か勤務外かの明確化、宿日直における労働負荷制限、面接指導なども設定されました。この改革の大きな柱は労働基準法が担っており、それを労働安全衛生法、医療法・医師法、介護保険法等々多くの法律がその柱を支えているということになります。
では私たちに最も身近なプライマリーケアを担う開業医はどうなのか。開業医は事業主であり労働法に定める労働者ではなく、国の労働時間規制にはそぐわないもので自由であるといえます。しかしながら2018年神奈川県保険協会が実施した調査によると開業医の4分の1が過労死ライン超えで働いておられ、1ヶ月の休日が1日以下の医師が3割という結果を見ると複雑な思いがします。
勤務医の労働時間制限は、地域の病院や診療所等への派遣制限がなされることなど不安に思うことは多々ありますが、私たちの人命を預かるという業務を担っている医師の適正な労働を支援していくことは患者等(医療受益者)の利益につながります。
(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 大谷 史子 社会保険労務士)