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第60回勤改センター通信『健康診断の費用は誰負担?検診時間は労働時間?』

「健康診断の費用は誰負担?検診時間は労働時間?」

 

 毎年、健康診断は受診されていますか?当然医療関係者であれば皆さんが受診されていると思います。事業者は労働安全衛生法という法律で事業者が雇用したパートを含む週30時間以上(正規従業員の労働時間4分の3以上)働く労働者に対し、医師による雇い入れ時健康診断と年に1 回の定期健康診断を義務づけられています。さらに常時50人以上使用する事業所の場合は、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。また、その結果を5年間保管しておくことも事業者の義務です。

 事業者に義務付けられている健康診断の費用は、全額事業者の負担とすることが労働安全衛生法によって定められています。ただし、事業者負担が義務付けられている費用は、あくまで法定項目のみです。そこで、定期健康診断における法定項目を下記にまとめました。

・既往歴及び業務歴の調査

・自覚症状及び他覚症状の有無の検査

・身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

・胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)検査

・血圧の測定

・貧血検査

・肝機能検査

・血中脂質検査

・血糖検査

・尿検査

・心電図検査

健康診断において再検査が必要と診断される従業員がいる可能性があります。再検査にかかる費用を事業者が負担する義務はありません。そのため、再検査費用は従業員の自己負担とすることが可能です。しかし、事業者から再検査を強制することはできません。そのため、従業員によっては再検査を受診しない可能性があります。再検査と診断されているにもかかわらず放置していると、従業員の健康に問題が生じてしまいかねません。したがって、再検査を受診しやすい環境づくりの一環として、再検査費用も事業者負担とされているところも多いです。

あと、検診時間は労働時間に当たるのか、ということをよく聞かれます。雇入れ時健康診断や定期健康診断については、業務との直接の関連がないため、当然に業務時間中に実施する必要はないものと考えられます(特殊健康診断は除く)。したがって、例えば、所定労働時間外に受診させたとしても、時間外労働手当等の賃金の支払い義務はありません。ただ、行政解釈も同様に解していますが、この通達は受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいとしています。

最近は、法定の定期健康診断にあわせて、がん検診なんかも受けられるような制度を導入している事業者も増えてきています。事業者には従業員が健康に働けるよう安全配慮義務が求められるため、健康診断を実施しないといけません。一人一人が自分の健康に留意するのは当たり前ですが、安全配慮義務が求められている以上健康管理をしっかり行わないといけないのは事業者になります。適切な健康管理を行うために、そしてみんなが安心して働けるように従業員の適性にあわせた健康診断の実施が求められます。

 

 

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 田中 伸一 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2023年6月号(No.816)掲載記事はこちら