安心して働ける快適な職場を作りましょう!!
『時間外労働に関する2つの適用猶予が近く終了します。』
1.医師への時間外労働の上限規制
2019年より導入された働き方改革による時間外労働の上限規制について、医師への適用猶予が来年(2024年)3月までとされており、来年4月から適用される「医療機関の特性に応じた時間外労働の上限規制」への対応準備が適宜進められています。
具体的には医師の時間外・休日労働が年960時間を超えない場合がA水準、救急医療等の対応上、年960時間を超える医師が存在する場合がB水準、他の医療機関での勤務と通算で年960時間を超える医師が存在する場合が連携B水準、臨床研修プログラム等による研修又は高度特定技能育成の診療業務を行う場合がⅭ-1、Ⅽ-2水準とされ、当面の時間外・休日労働の上限(暫定特例水準)を年1,860時間とし、A水準以外に該当する医療機関は、医師労働時間短縮計画を作成し評価センターの審査を受けた上で、都道府県の特例水準対象医療機関の指定を受け、将来的に暫定特例水準の解消を目指すこととされています。
現在、該当する医療機関で追加的健康確保措置(連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制等)を踏まえた勤務体制の検討が進められているところですが、このような取り組みを進めていくためには、医師の労働時間の把握を的確に行うこと、変形労働時間制度等に対応してどの部分が時間外労働となるかをしっかりと押さえることが重要になると考えられます。
2 月60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率の引上げ
今年(2023年)4月からは、規模、職種を問わず「月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」こととなります。これは、中小企業に適用が猶予されていた労働基準法の改正の適用猶予が今年の3月で終了することによるものです。
月60時間を超える法定時間外労働を深夜(22時~5時)の時間帯に行わせた場合は、深夜割増を加え75%以上となること、法定時間外労働には、法定休日に行わせた労働は含まれませんが、それ以外の休日に行わせた法定時間外労働は含まれることなどに注意が必要です。
また、労使協定を締結することにより、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与する制度を設けることができることとされています。医療機関においては、代替休暇の取得自体が困難な状況もあろうかと思われますが、職種によっては突発的な事情により、月60時間を超える時間外労働が発生した場合の対応として設定を検討する余地もあるかと思われます。
3 働き方改革への取り組み
このように適用猶予が終了する制度は、いずれも働く方の健康維持を目的に制度化が図られたものです。
地域の医療水準を維持しながら、これらの制度に対応していくことは、大きな困難を伴う課題と思われますが、健康維持等に配慮した働く環境を整備していくことは時代の流れでもあり、何とか職場の中で働き方の見直しを進めることにより対応していく必要があり、支援センターも相談等に御活用ください。
(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 長谷川 誠 社会保険労務士)