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第55回勤改センター通信『副業・兼業時の労働時間の通算と割増賃金』

『副業・兼業時の労働時間の通算と割増賃金』

 

労働基準法第38条第1項では、労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間の規定の適用については通算すると規定されています。そして、厚生労働省の令和4年7月改定の副業・兼業のガイドラインでは、副業・兼業の場合の労働時間の通算方法として、原則的な労働時間管理の方法と管理モデルによる方法が示されています。

ここでは、簡便な方法とされている管理モデルについて説明しておきます。

 

管理モデルでは、副業・兼業の開始前に、労働契約の締結が先であるA事業場における法定外労働時間とB事業場における所定労働時間および所定外労働時間を合計した時間数が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において各々の使用者が労働時間数の上限を設定し、各々の使用者がその上限の枠内で、それぞれ労働させ、割増賃金を支払うこととするものです。

 

例えば、A事業場における1か月の時間外労働の上限が50時間、B事業場における月の労働時間の上限が20時間とされた場合では、B事業場の20時間についても、25パーセント以上の割増賃金の支払いが必要となります。また、通算した時間外労働が60時間を超える10時間に対しては、あとから労働契約を締結したB事業場が50パーセント以上の割増賃金を支払うことが必要となります。

県内の医療機関では、基幹病院から医師の派遣を受け入れているケースが多いとされていますが、場合によっては、50パーセント以上の割増賃金支払いが必要になるということです。

 

この1月の時間外労働60時間超の部分に対する50パーセント以上の割増賃金の支払いについては、中小企業はこれまでその適用が猶予されてきました。医療の分野では、常時使用する労働者数が100人以下の医療機関が猶予の対象となってきました。しかし、今年の4月1日より、その猶予は撤廃され、原則通りとなります。派遣医師を受入れている中小の医療機関にとっては、大きな問題です。就業規則の割増賃金の規定の整備等の対策が急務でありますが、法定休日の特定の問題も重要です。1月60時間超の時間外労働にカウントしない法定休日の労働とカウントする所定休日(法定外休日)の労働をその週ごとに判断・決定するようであれば、割増賃金の計算が非常に複雑で困難なものになるからです。是非勤改センターに相談していただくようお願いいたします。

 

なお、宿日直の許可を受けている場合、副業先での当該許可の宿日直業務の労働時間は通算されず、割増賃金の支払いは不要です。医師の派遣業務が宿日直業務である場合、宿日直許可取得はこの問題に対する有効な解決策でもあると言えると思います。

 

(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 田淵淳一 社会保険労務士)

 

 

 

▶鳥取県医師会報2023年1月号(No.811)掲載記事はこちら