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第49回勤改センター通信「医師の働き方改革」時間外労働上限規制に向けて

その契約、大丈夫ですか?  業務委託契約と雇用契約について

 

2024年4月から勤務医の時間外労働上限規制が適用されます。上限規制の時間外労働時間には、副業を行う労働時間も通算されます。そのため副業先の医療機関は、非常勤で雇用している医師の労働時間を把握する必要があります。

医療機関の中には副業を行う医師と業務委託契約を締結しているところもあるようですが、契約の名称に関わらず実質的には雇用関係にあると評価される場合がありますので注意が必要です。

 

《業務委託契約とは》

副業の医師との業務委託契約は「業務の遂行に対して報酬を受ける」準委任契約形態です。具体的には、業務の内容、遂行方法について使用者の指揮命令を受けません。また、働いた時間ではなく業務の成果に対して報酬が発生します。業務の代替性があり本人に代わって他の者が仕事をすることや補助者を使うことも認められます。租税公課の負担など医師が事業者としての責任において行います。労働基準法の適用を受けないので時間外労働の概念もありません。

 

《雇用契約とは》

雇用契約は、契約の一方(労働者)が労働に従事し、もう一方(使用者)がこれに対して賃金を支払うことを約する契約です。具体的には、業務の内容、遂行方法について使用者から指示命令を受け、時間的、場所的拘束を受けます。また、一定時間の労働に対する報酬が決められています。労働者として労働基準法、労働者災害保険法など諸法令の適用を受けます。副業先の労働時間を主たる勤務先の医療機関に医師が自己申告することにより労働時間の通算を行います。

 

《業務委託契約のはずが雇用と判断される場合がある》

業務委託契約の医師に以下の要素があれば労働者性があるとみなされる可能性があります。

➀業務を行う上で業務の進め方など具体的に指揮命令を受けている(注:通常注文者が行う程度の指示にとどまる場合には指揮命令を受けているとまでは言えない)

②仕事の依頼・指示に諾否の自由がない(注:包括的な業務を受託した場合、契約上の義務により個々の仕事の選択ができないのは当然であり、それをもって雇用関係にあるとは判断できないとの判例もある)

③報酬の性格が委託事業者の指揮監督下に一定時間労務を提供する対価として支払われる

④業務の代替性がなく自分で働かなければならない

⑤仕事に必要な備品や費用などを委託事業者が負担している

 

医師の業務委託契約には上記➀、②のようにグレーゾーンがあります。本来は業務委託契約ではなく、雇用契約である場合も考えられますので、時間外労働上限規制までに副業の医師との契約内容を整理しておく必要があります。

 

(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 安酸早苗 社会保険労務士)

 

 

▶鳥取県医師会報2022年7月号(No.805)掲載記事はこちら