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第43回勤改センター通信『雇用保険マルチジョブホルダー制度が始まります』

令和4年1月1日に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が施行されました。雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所で所定の適用要件をすべて満たす場合に本人の申出により特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度をいいます。

適用要件

①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること

②2つの事業所(それぞれ週所定労働時間5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して週所定労働時間が20時間以上であること

③2つの事業所でそれぞれ31日以上雇用される見込であること

 

加入手続は、労働者本人が行います。事業主ではありません。なぜなら、複数の事業所の労働時間等を各事業所が把握することは困難だからです。労働者は自らの居住地を管轄するハローワークに「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」(マルチ雇入届)を提出することで申出の日からマルチ高年齢被保険者となります。勤務先の事業主の同意は必要とされていません。もっとも、マルチ雇入届には事業主記載欄があるため、労働者から記載を依頼された事業主は速やかに対応しなければなりません。また、マルチ高年齢被保険者として雇用保険に加入すること等を理由として解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、労働者に不利益な取り扱いをすることは禁止されます。

 

雇用保険料の納付義務は、マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から発生します。資格取得日は、ハローワークから事業主宛に送付される「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知用)」に記載されています。雇用保険料は通常の雇用保険と同様の料率で、労働者本人と事業主が負担します。

 

マルチ高年齢被保険者の資格喪失手続は、労働者本人が行います。労働者は被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に自らの居住地を管轄するハローワークに「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」(マルチ喪失届)を提出し、失業等給付を受給する予定の場合には併せ離職証明書の提出も必要になります。マルチ喪失届には事業主記載欄がありますので、労働者から記載を依頼されたら事業主は速やかに対応しなければなりません。離職証明書の交付依頼があった時も同様です。

 

失業時の給付は、一時金です。1つの事業所のみ離職した場合でもその事業所の賃金額に基づき支給されます。正当な理由のない自己都合離職である場合等の給付制限も同様に適用されますが、2つの事業所を離職して離職理由がそれぞれ異なる場合は給付制限がないほうに統一されます。

 

マルチ高年齢被保険者が3つ以上の事業所で雇用されていた場合は、適用対象になっているいずれかの事業所を離職等しても、他の事業所の週所定労働時間を合算して20時間以上になるなど適用要件を満たすのであれば引き続きマルチ高年齢被保険者として取扱われます。この場合、労働者は従前の2事業所に関するマルチ喪失届を提出した後、改めて新たな2事業所でのマルチ雇入届を提出しなければなりません。

 

(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 荒松雅美 社会保険労務士)

 

 

▶鳥取県医師会報2022年1月号(No.799)掲載記事はこちら