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第40回勤改センター通信『労務管理と経営計画ー休暇という視点から考えるー』

1 経営における短期計画、中長期計画

 経営においては、一般に「短期経営計画」、「中長期経営計画」を策定して、そこで定めた目標を達成するために組織活動が行われるのが普通のことのように思います。

 ところで、「労務管理」という言葉をどのように定義するかということはありますが、人事評価や人材登用に関する「人事管理」や、賃金体系や人件費管理等に関する「賃金管理」などは「労務管理」に該当するということに異論はないものと思います。そして、これらのことは、労働者の能力を最大限に引き出し、組織の目標を達成するために行う「雇用管理」ということができますので、結局、「労務管理」は、「経営計画」の一要素といえるのではないかと思います。

 

2 医療分野における労務管理の課題 ~休暇という視点~

 医療分野においては、2024年4月からの働き方改革に適合することが求められ、労働時間の適正管理が喫緊の課題となっています。端的に言えば、いかに残業時間を減らすかと言うことですが、ここでは、休暇という観点から述べてみたいと思います。

 例えば、厚生労働省が公表している「就労条件総合調査」によると「年休」の取得状況は下表のようになっています。

 本調査によると、全産業においても、医療・福祉においても、近年、年休取得率は向上しています。特に10年前、平成21年の実績と比べると、いずもれ10ポイント近く向上しています。

 それでも、諸外国に比べると取得率は非常に低いと指摘されています。そもそも公的な統計として「年休取得率」が調査項目として存在しない国もあります。

 これらの国は、年休を取得させるのは雇用主の義務であり、「取得率100%」が当たり前だからといわれています。雇用主の義務なので罰則で義務の履行を強制する制度もあります。

 日本では、2019年4月1日から年5日の「計画年休」の取得が義務付けられましたが、これも諸外国に比べて年休取得率が低いために政府が業を煮やした結果だといわれています。

 

3 労務管理における「長・長期計画」的視点

 このように見てくると、将来的には、労働者が有給休暇を100%取得する(あるいは強制的に取得させる)ことを前提とし、さらには特別休暇制度がある場合は、労働者がその休暇を完全に取得することも前提とした労務管理=経営計画を検討する必要があるように思います。それは、人材のさらなる確保を要求することに繋がるのかもしれません。

 2024年4月からの制度改正に頭を悩ませている経営者の方からはお叱りを受けそうですが、それでも、政府が労働力の流動化、国際化を指向し、国内においては少子高齢化が進展する現実を見据えれば、「長・長期的な経営計画」においては、これまでに述べたことも意識しておくことが重要ではないかと考えています。

 

労働者1人平均年次有給休暇の取得状況
  調査公表 令和2年 平成31年 平成30年 平成29年 平成28年   平成22年
対象期間 令和元年 平成30年 平成29年 平成28年 平成27年   平成21年
全産業 付与日数(日) 18.0 18.0 18.2 18.2 18.1   17.9
取得日数(日) 10.1 9.4 9.3 9.0 8.8   8.5
取得率(%) 56.3 52.4 51.1 49.4 48.7   47.1
医療・福祉 付与日数(日) 16.7 17.0 17.0 16.8 16.7   14.5
取得日数(日) 8.9 9.0 8.9 8.8 8.4   6.4
取得率(%) 53.4 53.2 52.2 52.5 50.2   44.0
出典:就業条件総合調査(厚生労働省HP等)

 

今回の担当 医療労務管理アドバイザー 入江裕之 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2021年10月号(No.796)掲載記事はこちら