鳥取県医療勤務環境改善支援センター

安心して働ける快適な職場を作りましょう!!

鳥取県・鳥取労働局委託事業:公益社団法人 鳥取県医師会

  • ホーム
  •  > センター通信
  •  > 第36回勤改センター通信『年金制度改正法によって変わるシニア層の働き方とは?』

第36回勤改センター通信『年金制度改正法によって変わるシニア層の働き方とは?』

   今後人生100年時代が到来すると言われていますが、現在でも60歳を超えても多くの人がまだまだ現役で働いておられます。年金の支給開始年齢も引き上げられていますが、よく年金相談の場で「働きながら年金を受け取ることができますか?」という質問を受けます。実は、年金の受け取りの条件は、年齢や収入に応じて変わってしまうことはご存知でしょうか?

 年金を受けられる人がそのまま働いていると、年金の一部または全額が支給停止されることがあります。これを『在職老齢年金』制度といいます。

   在職老齢年金とは、70歳未満の人が厚生年金に加入しながら仕事をしている場合や、厚生年金保険制度を設けている企業に勤めていたときに「老齢厚生年金」の額が調整される仕組みです。もらえる額は、老齢厚生年金と給与(賞与込み・総報酬月額相当額)を踏まえて決定されます。すなわち、「給料をもらって働いた場合」に適用される年金制度の一種です。

    現行の制度では、年金の支給繰り上げをしながら働いている、もしくは特別支給の老齢厚生年金を受けている60~64歳までの方は、賃金などと年金受給額の合計が月額28万円を超えると、超過分の年金の支給が停止されてしまいます。実は、この度法改正が行われ、改正後(2022年4月施行)はこの制度が見直され、年金の支給停止の基準額が月額28万円から47万円に緩和されることになりました。なので、改正後は多くの方が年金をそのまま全額受け取りながら働くことが可能となります。なお、65歳以上で働きながら年金を受給している方は、もともと基準額が47万円となっており、変更はありません。
 また、現行制度では65歳以上で在職中の場合、退職時に年金額が改定されるまでは年金受給額が変わりませんでした。しかし、今回の改正で、65歳を過ぎてからも働いている場合、毎年10月に保険料の納付額をもとに年金受給額を見直し、年金額の改定が行われることになりました。これを在職定時改定といいます。在職定時改定制度があることで、毎年働いた分の年金額がアップするので、続けて働こうとするモチベーションの維持にもつながると思います。

 この度の改正では、この他に厚生年金の適用範囲の拡大(2022年10月より101人以上の事業所に拡大)や受給開始年齢の上限を70歳から75歳に引き上げることが決定しています。

 今後、健康寿命が延びることによって老後の生活をどのようによりよいものにしていくかということが社会全体の問題となってくると思います。これからは、従来の「定年」という制度にこだわらず、生きがいとして仕事を続けることでお金を稼ぎながら、趣味や旅行なんかも楽しめる、そんなシニア世代の生活様式になっていくのかもわかりません。今回の改正は年金制度の面からこのような生き方を応援していく改正とも言えると思います。

 

(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 田中伸一 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2021年6月号(No.792)掲載記事はこちら