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はじめに
同性愛者であることを同級生に暴露(アウティング)された一橋大学の学生がショックを受けて大学の建物から転落死したことに対し、遺族が大学側に損害賠償などを求めた「一橋大学アウティング事件」裁判の控訴審判決が令和2年11月25日に言い渡されました。東京高裁はアウティングについて「人格権ないしプライバシー権を著しく侵害するものであって、許されない行為であることは明らか」と明言しました。以下、労務管理の現場におけるアウティングについてパワハラと交えて解説をします。
アウティングの定義
アウティングとは、「好きになる相手の性別(性的指向)」や、自分の認識する性別(性自認)を本人の了解なく第三者に暴露すること」を指します。関連した言葉で「SOGIハラ」という言葉があります。SOGIハラとは、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)の頭文字を取った「SOGI」に対する侮辱的な言動を言います。つまり、アウティングはSOGIハラ行動の一種であることがわかります。
厚労省「パワハラ防止指針」との関係
厚労省が発表する「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚労省告示第5号)」では次のように明記されています。)
・精神的な攻撃
…人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
・個の侵害
…労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する
このように、SOGIハラやアウティングは明確にパワハラであるとされているため、事業主は防止のための措置を講じなければなりません。
(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 尾﨑宏之 社会保険労務士)
▶鳥取県医師会報2021年2月号(No.788)掲載記事はこちら