健康なんでも相談室

末期変形性膝関節症

回答者:  鳥取県東部医師会員 鱸 俊朗

 

 

質問

 

 85歳女性。今年5月より膝の腫れと痛みあり、整形外科にて末期の膝関節炎(変形性膝関節症)と診断されました。

 保存的療法として5か月間、関節穿(せん)刺(し) とヒアルロン酸注射を受けました。治療当初は効果がありましたが、最近は関節穿刺でも症状の改善がありません。このままの状況での変形性関節症の予後を教えてください。

 

 

回答 

 フレイル予防の重要性

 

 「末期」という言葉ですが、整形外科的にはエックス線所見による評価で広範囲に軟骨がなくなり、軟骨の下にある骨が直接擦れ合っている状態をいいます。関節の不安定性有無や脚の並び(O脚,エックス脚など)だけを考えても、患者さんごとに症状はさまざまです。

 予後についても確定したことは言えませんが、年齢を考えると移動能力の低下による筋力低下、関節の滑動、荷重刺激の減少による軟骨変性、骨の脆弱(ぜいじゃく)性の進行、さらに日常生活の制限が加わり、生活での活気がなくなる結果として生活の質を落とすだけでなく、様々な合併症を引き起こす危険性もあります。

 このような状態を「フレイル:加齢により心身が老い衰えた状態」といいます。そうならないためには予防が大切ですが、それには、保存的療法を選択するのであれば疼痛(とうつう)コントロールとしての薬物療法、再生医療を含めた関節注射、装具療法、リハビリテーション(医療あるいは介護)など、さらには、人工膝関節の適応がないかセカンドオピニオンを利用する選択肢もあると考えます。