健康なんでも相談室

WPW症候群と妊娠-分娩後は根治的療法(カテーテル焼灼術)の選択も-

回答者:  西部医師会員 小竹 寛

質問

28歳女性、現在妊娠7か月。21歳の時に健康診断でWPW症候群といわれたが、今まで軽い動悸を年に数回感じた程度です。現在は順調ですが、「臨月には血液量も増え、発作の可能性もある。」と言われ心配になり、総合病院での分娩を考えていますが、どうでしょうか。

回答

WPW症候群は心臓の中で、正常な刺激伝導路(いわゆる電気の流れる線)の他に通常より電気が流れやすい副伝導路が存在するため、電気の旋回が起こりしばしば頻脈性不整脈が出現します。それにより動悸から失神までのさまざまな症状をもたらし、ときに突然死を招くことがあり注意を要します。

この方の場合は、たまたま健康診断でWPW症候群と診断され現在まで多少動悸を感じることはあっても、明らかな頻脈性不整脈はとらえられておりません。通常なら経過観察でもよいと思われますが、現在妊娠しておられることが問題となります。万一、頻脈性不整脈が起こっても妊娠中であることから薬剤使用はなるべく避けたいところです。ただ、(この方に起こる可能性はきわめて低いと思われますが)血圧が維持できない頻拍発作、本症に合併する心房細動発作が出現した場合は緊急な治療が必要です。妊娠が進むにつれて心臓に負荷がかかること、分娩時に帝王切開等の産科的手術の可能性も完全には否定できないことなどを考慮して、不安をお持ちでしたら循環器科の標榜のある総合病院にご相談されることをおすすめいたします。なお、今後もお子様を望まれるようでしたら、WPW症候群の根治的療法としてカテーテル焼灼法がありますのであわせてご相談してみて下さい。