健康なんでも相談室

10年前に胃切除、近年腹鳴が-考えられる4つの原因-

回答者:  米子医療センター外科医長(研究検査部長) 木村 修

質問

六十五歳の男性。十年前に胃癌の手術を受け、二~三年前から食後にお腹が「ゴロゴロ」鳴ります。大きな病院に行きますが原因が判りません。良い薬はないでしょうか。よろしくお願いします。

回答

お腹が「ゴロゴロ」鳴るのを医学的には腹鳴(ふくめい)またはグル音と言い、腸内のガスが内容物と混じって流れる時に生じる音です。一般的には、腸に沢山の空気あって、腸が活発に動いていると起こります。しかし、ご質問の方は、胃癌のため胃を三分の二あるいは全部切除されておられると思いますので、多少、原因が違うように思われます。

(原因)①ダンピング症候群¨胃の切除を受けられた方では、食物が急激に小腸に排出されるため食後二十~三十分すると発汗、頻脈、熱感、顔面紅潮などの全身症状と腹鳴、腹部膨満、腹痛、下痢などの腹部症状が出現し四十五分位持続することがあり、これをダンピング症候群といいます。これは高濃度の消化物が急激に小腸に排出されるため腸管内へ水分が移動し小腸が急激に拡張することに加え、消化管ホルモンなど種々の物質が放出され色々な自律神経症状、血管運動神経症状を来すためです。このため、胃切除を受けた方が急いで食事をされると、腹鳴などのダンピング症状が強く現れるようになります。②呑気症¨食事の際、空気を飲み込むことを呑気といいますが、胃の有る方では飲み込んだ空気をげっぷとして出すことができます。しかし、胃切除を受けた方では、胃内に空気を貯めるところが少なく小腸に空気が流入しやすくなります。このため、胃切除を受けた方が大口であわてて食事をされると小腸に空気が多く入り腹鳴の原因となります。③下剤の副作用¨術後に便秘などがあり下剤を服用されていますと、下剤によって腸管の動きが強くなり腹鳴を来すこともあります。④腸閉塞¨術後には腸管が癒着することが多く、この癒着部で腸管の流れが悪くなりますと、腸閉塞を来すことがあります。このような場合にも腸管の動きが活発となり腹鳴を来すことがあります。腹鳴とともに腹痛を伴うようでしたら、腸閉塞も考えられますので病院を受診して下さい。

(対策)①ダンピング症候群、呑気症を防ぐためには、食事を良く咬んでゆっくりと食べて下さい。また、ご飯などの炭水化物よりも魚、肉などの蛋白質、脂肪分を多く食べて下さい。②下剤を飲んでおられる場合は仕方がありません。③腹鳴とともに腹痛がある場合には手術を受けた外科の先生にご相談下さい。