健康なんでも相談室

高齢者の高脂血症

回答者:  鳥取県西部医師会員 都田裕之

質問

 77歳の母が健診を受け、LDL-C(コレステロール)146、TG243、HDL-C38で、ビタバスタチンを処方されました。他に既往症はありません。この数値で他に既往症がない高齢者が薬を飲む必要があるでしょうか。

 

 

回答

 納得がいく治療法を

 

 特定健診では、LDL-Cについては、120mg/dl未満を基準値、140mg/dl以上を受診勧奨判定値としています。特定健診は、境界域レベルから介入することにより、心筋梗塞の発症を減少させることを目的の1つとしています。日本動脈硬化学会の治療ガイドによると、ご質問の方の場合、低HDL-C血症と判断すると、LDL-Cの管理目標値は120mg/dl未満となります。かかりつけの先生は、ガイドに従って処方されたと推察いたします。 ただ、心筋梗塞のリスクが高い家族性高コレステロール血症の診断基準の1つとなっているLDL-C値180mg/dl以上であれば、積極的な治療が絶対に必要ですが、180mg/dl未満の場合、日本人では、元々、心筋梗塞の発症率は高くはなく、5年間で心筋梗塞の発症を1人減らす効果は、200人以上治療することによって得られるものであり、費用対効果に疑問を呈する意見もあります。基準値を改める動きもあります。2014年に、日本臨床検査標準化協議会から、健常者のLDL-Cの基準値として65~163mg/dlが提案されました。また、勤労者の集団健診を行う機関では、180mg/dl以上を要精検と判定しています。しかし、心筋梗塞の既往や狭心症だけでなく、糖尿病や慢性腎臓病、脳梗塞、末梢動脈疾患などの高リスクの病態が存在すれば、ガイドに示されたようなLDL-C値の管理が必要であることに変わりはありません。 まず、既往歴や家族歴、併存症、生活習慣を理解されている先生のお話を改めてお聞きになり、その上で納得できる治療法を選んでいただくのがよいと思います。