健康なんでも相談室

高齢者の腰痛-変形性腰椎症-

回答者:  鳥取県立中央病院整形外科部長 鱸 俊朗

質問

90歳 男性。以前に両膝関節が痛み、整形外科へ通い、注射をして頂き軽快しました。その後も再発の都度、治療を受けています。現在一番難儀しているのは腰痛(特に左側)で、体を動かすと痛みが強くなります。座っていてもズキンズキン痛み、注射、塗り薬、貼り薬、フェルデン、坐薬を使っておりますが、なかなかよくならず歩行も困難です。よい治療法があれば教えてください。

回答

90歳とご高齢であること、以前に変形性膝関節症で加療されていることなどより、加齢による腰の退行変性疾患が考えられます。あなたの症状を整理しますと、体を動かすと痛みが強くなる、座っていても痛い、腰の左側「腰仙椎部」が痛い、など痛みの種類や部位から診ますと変形性腰椎症、腰椎変性側弯が最も考えられます。この疾患は椎間板の変性による椎体のまわりの骨棘形成、椎間関節の関節症性変化「膝の関節症と同じです」が特徴であり、椎体の回旋変形を伴うと側弯「腰が傾いたり、曲がったりする」が生じます。

お尻から太股の付け根にかけての痛み、太股の裏から足にかけての痛み、腰をそらすと脚にしびれが生じるなど下肢症状が強いと腰椎辷り症「椎体が前後にずれる」が考えられ、さらに、長い時間歩くことや立っていることが辛い、立ち止まって休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行」等の症状があれば脊椎管狭窄症「神経の束の通り道が狭くなる」が考えられます。

治療は高齢者でもあり、保存的治療が主体となります。保存的治療は装具療法、牽引療法、温熱療法、運動療法などの理学療法と薬物療法です。

装具は腰仙椎コルセット、間欠性跛行のある場合は腰が伸びきらないようにするコルセットがよいと思います。運動療法は腹背筋の強化運動、ご高齢ですのであまり無理のないプールの中での訓練をお勧めします。薬物療法では下肢症状の強い場合は硬膜外注射がよいと思います。またバランスをとって腰に負担をかけないためにも杖の使用をお勧めします。

手術療法の適応は主に下肢症状が強く保存的療法の効果がない場合であり、ご高齢であることや腰痛が主訴であることを考えると適応は少ないと思います。