健康なんでも相談室

高血圧-生活習慣の改善 適切な運動療法を-

回答者:  鳥取大学医学部附属病院 循環器内科講師 荻野和秀

質問

55歳、女性。今年4月より病院のメッセンジャー業務をすることになり、1日(8時間)平均16,000歩~18,000歩いています。7月末下肢痛で整形外科を受診、筋肉疲労の診断を受け内服薬等の処方を受けましたが、疲労感が強く帰宅後は何もできません。

歩くことは害にならないと言われましたが、長期間歩く場合の身体に及ぼす影響をお教えください。また、その後内科も受診し高血圧治療を始めましたが、低体温と不快感で何もする気になりません。

元の身体を取り戻すにはどうしたらいいでしょうか。身体が動かないことで、精神的にもショックを受けています。

回答

不摂生な食習慣、運動不足、喫煙などの生活習慣の歪みに起因する病気を生活習慣病と呼び、高血圧は糖尿病や高脂血症と並んで生活習慣病の代表的なひとつです。生活習慣病の予防・治療には運動療法が有効で、運動をよく行っている人は肥満、糖尿病、高血圧になりにくく、心臓病による死亡が少ないことが知られています。日常生活における運動は歩行が基本で、理想的には一日一万歩(6?7 km)以上歩くことが推奨されています。その他、軽いジョッギングやスポーツジムなどにある自転車エルゴメーターや水泳などがよく行われています。運動の強さは中等度が健康によいと言われ、軽すぎる運動は効果が出にくく、強すぎる運動は膝や腰などの事故につながりかねません。中等度の運動とは酸素を使い体内で脂肪を燃やす有酸素運動であり、ちょうど息が弾み体が汗ばむ程度の運動です。運動の時間と頻度は一回30分以上、最低週二回以上必要です。ただし、マラソン中の突然死の報道もあり、生活習慣病などの病気を持った人は必ず主治医の先生と事前に相談して下さい。

さて今回の御相談ですが、一日16,000歩~18,000歩というのは、運動習慣のない中高年の方にとっては明らかに過剰な運動であり、前述したように過度の疲労や整形外科的な障害の原因となります。できましたら一日5,000歩ぐらいから少しずつ歩行数を増やしていく方がよいと思います。また、疲労や事故の防止には靴も重要で、歩きやすく足に負担をかけないウォーキングシューズを購入された方が良いでしょう。一方、最近の血圧はおおよそ140-160/80-100mmHgぐらいとのことですので、この程度の血圧では御相談されたような症状が出現するとは考えにくく、高血圧以外の原因の可能性が考えられます。

いずれにしろ、高血圧の治療には運動療法だけでなく、食事療法(減塩、減量)や禁煙などの生活習慣全般の是正が重要です。あなたの病状をよくご存じの主治医の先生によく御相談されることをお奨めします。