健康なんでも相談室

高血圧の薬どうのむ?-治療の基本は食事、運動-

回答者:  鳥取県医師会理事 吉田眞人

質問

40才男性です。職場健診で高血圧を指摘されました。しかし一度薬をのみ始めたらやめることができなくなると言われ、これから何年も薬をのまなくてはいけないのかと思うと病院へ行く事に抵抗があります。薬をのみ続けなければならないと言うのは本当でしょうか?

回答

日常診療や産業医活動でよく受ける質問です。一般的に血圧が高くても自覚症状がほとんどない期間が長く、治療の必要性を感じにくいものです。また頭重感や肩こりが高血圧による症状である事に気づかない人もあります。しかし、放置すれば心臓、脳、腎臓、全身の血管に負担がかかり続け、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中等命にかかわる「心血管病」をひきおこすことがあるので、高血圧は「静かな殺し屋」と呼ばれています。

血圧が高くなる原因はおもに2つに分けられます。
①動脈硬化:加齢に伴い、血管壁が硬く、もろくなる。
②交感神経の活性化:心臓の収縮力や心拍数を増加させたり、神経末端や腎臓、副腎から血圧を調節するホルモンの分泌を増加させ、ナトリウムを体内に蓄積させる。

したがって、動脈硬化は加齢で進行するので、薬の治療をやめられなくなるという話にも一理あるわけです。

しかし、ストレス社会で自律神経に影響され血圧が上がっている人なら、日常のストレスから解放されれば血圧が正常化したり、更年期年齢には高く不安定であっても、その年齢を過ぎると安定したり、正常化することも時々経験します。従って、質問者の血圧が自律神経に影響されている要素が多ければ、ずっと薬治療が必要とは限りません。一般に、薬をのんで血圧がコントロールできている人で、休薬しても血圧が上がってこないケースは一割位といわれています。

質問者は、治療はすぐに薬と考えておられるようですが、治療の基本は食事や運動等生活習慣の改善です。また高血圧治療ガイドラインでは、血圧をその数字から軽症、中等症、重症に分けて、血圧以外の心血管病危険因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質代謝異常、微量アルブミン尿、高齢、若年発症の心血管病の家族歴)をいくつもっているかの組み合わせから、低リスク、中等リスク、高リスクに分けて治療を考えます。

低リスク群は3ヶ月、中等リスク群は1ヶ月の生活習慣の改善を優先して行ってから、薬治療を考えることになっています。

まず御自分の血圧変動を家庭用血圧計でしっかり測定し、他の心血管病の危険因子をもっていないか把握した上で、自分の血圧がどのリスクに入るかを見極めて、かかりつけ医と治療の相談をして下さい。