健康なんでも相談室

高血圧の人の入浴 -適温浴を守り「かけ湯」と「腰湯」で事故防止-

回答者:  東部医師会員 松浦喜房

質問

70歳の女性。5年ほど前から血圧が高いといわれていますが、特に薬は服用していません。最近お風呂に入るとのぼせやすいと感じていますが、友人に2泊3日で温泉旅行に行こうと誘われています。入浴に関してどんなことに注意したらいいでしょうか?

回答

県内はもとよりわが国は温泉が豊富で、心も身体もゆったりと休ませるのに最適だと思います。一方、温泉に限らず、自宅でも入浴時に脳や心臓に関係した事故が頻繁に見られることも事実で、一人暮らしのお年寄りで血圧の高い方や狭心症の方は、特に注意が必要です。

42℃以上の高温浴では、入浴中に血圧が著明に上昇して脳出血やくも膜下出血の原因になりやすく、また浴槽から出るときに血圧が急激に低下して脳虚血発作を引き起こしたり、狭心症発作や不整脈を生じやすいといわれています。湯温を測定して40~41℃の適温を守りましょう。入浴前後にはコップ1杯の水分補給が、脳梗塞や心筋梗塞の予防になります。また「かけ湯」を入念に行い、静かに入湯します。「腰湯」といわれる半身浴が体に負担をかけません。施設によっては「寝湯」も良いでしょう。のぼせやすさには個人差がありますが、長湯せず体が温まったら早めに出て、入浴回数は1日4回以内としましょう。立ちくらみに注意して浴槽の縁を支えにして出湯し、15分位は安静にしましょう。入浴直前の食事や喫煙にも注意が必要で、特にアルコールを飲んだ後の入浴は危険です。

血圧が高いといわれているようですが、家庭内で入浴前後等の血圧を測定することが心血管系の事故防止に役立ちます。その結果を持って受診されてはいかがでしょうか。また24時間記録できるホルター心電図は、防水処置を施せば入浴時にも記録可能ですので、狭心症や不整脈のモニターに有用です。