健康なんでも相談室

食事中のむせと咳き込み-軽いものなら老化による嚥下障害-

回答者:  国立療養所西鳥取病院神経内科 金藤大三

質問

79歳 男性。近頃食事中に食べ物が気管に入りむせ、咳き込みます。首をもたげて飲んだ時やきな粉を食べた時により強い。これは老化現象で何ら方法はないでしょうか。

回答

高齢による嚥下(飲み込み)動作の変化としては、70才頃からの喉頭の下垂と柔軟性の低下、食道入り口の柔軟性低下による最大開大量の減少、のどの奥(咽頭)の知覚低下などです。のどの奥(梨状窩)の形で程度に差はありますが、これらによってむせやすくなりますから、食事中は落ち着いて食べられる環境、姿勢、またのどに詰めやすい食物を避けるなどの注意も必要です。病院では健常老人の訓練は行っていませんが、原因はのどの奥の知覚低下、筋の柔軟性と筋力低下、腱のゆるみですから訓練の考え方には共通のものがあります。家庭でもできる方法もありますので機会があれば相談してみられたらいかがでしょう。

しかしあまり食事中にむせる、咳がでる、痰が多い、食事により疲労する、体重が減る、熱が出る、などの症状があれば専門医の診察が必要です。

なおACE阻害剤という血圧の薬の副作用で食べ物がのどを通る時の刺激で咳が出て、むせていると勘違いすることがあります。あまりひどい咳は問題ですが、この薬は飲み込みの機能自体にはいい影響を与えますから軽い咳ならそのままでよいでしょう。又ご質問のきな粉は若い人でもむせやすく一概に老化現象とは言えません。