健康なんでも相談室

飛蚊症(ひぶんしょう)-目の前に見える虫は何ですか?-

回答者:  鳥取県医師会常任理事 神鳥高世

質問

34歳の女性です。ふとした時に、黒い虫のようなものが飛んで見えることがあります。一匹のこともあれば、沢山飛んでいるように見えることもあり、その度に虫だと思ってびっくりします。しばらく目をぱちぱちすると消えていく感じです。何かの症状でなければよいのですが

回答

明るい所で白い壁や空を見つめた時に、目の前に虫や糸くず状のものが飛んで見えることがあり、眼球の動きと共に移動するように感じられるものを「飛蚊症」と呼びます。眼の構造はカメラに似ていますが、眼球容積の4/5を占める硝子体(しょうしたい)中に濁りがあると、その影が写真のフィルムに相当する網膜(もうまく)に映ることによって飛蚊症は大半が自覚されます。硝子体にはゼリー状の透明な物質がつまっており、光の通路であると共に眼球の形を保ち、外力による衝撃を和らげる作用があります。

飛蚊症の原因としては、加齢により硝子体の内容がゼリー状から液状に変化し、硝子体が縮んで網膜から剥がれる「硝子体はく離」のような生理的現象がほとんどですが、中には病的なものがあります。特に何らかの原因で網膜に穴があき(網膜裂孔:もうまくれっこう)、放置すると網膜内に硝子体の水分がまわり硝子体中に網膜が浮き出る(網膜はく離)では、初期に飛蚊症が急に増えることがあります。網膜裂孔の状態であれば、レーザー光線で穴の周囲を焼き固めるだけで治療できますが、網膜はく離になると入院して手術を受けることになります。その他、硝子体中の出血や炎症でも飛蚊症を自覚します。

この方の場合、飛蚊症が増えることもあるようですし他の症状は不明ですが、飛蚊症を初発症状とする病気では早期治療を要することが多いようですので早めに眼科医を受診し精密検査を受けられた方がよいでしょう。