健康なんでも相談室

頑固な腰.下肢痛-見逃されやすい仙腸関節由来の痛み-

回答者:  鳥取県立中央病院整形外科 鱸 俊朗

質問

六十九歳の女性。1年前より生じた膝、左脚の痛みが、徐々に悪化し、左下肢をひきずって歩くようになる。整形外科医の診断を受けたところ、腰、膝の骨は何ら異常が無いとのこと。最近は、左脚の付け根、もも、ふくらはぎ、そして足指まで痛みがあり、特に夜半から朝にかけ強い痛みを感じます。どのように対処したらよいでしょうか?

回答

質問の内容から、症状の悪化(疼痛範囲の広がり、運動時痛から安静時痛の出現)と診断がついていないことへの不安が感じられ、対処法について考える前に、まず正しい診断が必要と考えます。症状から考えられる病気として、3つにしぼってみると1)腰痛.坐骨神経痛 2)股関節痛(変形性股関節症)3)仙腸関節由来の疼痛が挙げられます。

1)腰痛.坐骨神経痛 についてはMRI検査をお勧めします。エックス線検査は、骨については正確に評価できますが、神経圧迫症状を起こす椎間板靭帯病変、腫瘍、腫瘍類似病変などの、異常軟部組織の評価は困難です。その点MRIは、外来で簡単に痛みもなく、それらの形態、質的評価も出来るため有用な検査と考えます。

2)高齢女性に多い股関節疾患である、変形性股関節症初期では、高率に股関節付け根から大腿、膝にかけて疼痛が出現し、椎間板ヘルニアなどの症状と類似することがあります。これは股関節の痛みを感じる神経が、腰から出た神経からきているために関連痛を起こすためといわれています。ぜひ、股関節のエックス線検査を受けてみてください。

3)仙腸関節由来の腰痛.下肢痛の、腰痛.下肢痛全体に占める割合は、3.5%から30%と報告者間で異なっていますが、少ないものではありません。また高齢者の女性に多く、仙腸関節性の痛みを自覚する範囲も、あなたの愁訴とよく似ていませんか?またこの病気の痛みの出る動作は、痛い側を下にした側臥位(睡眠ポジション)や、ソファーに深く腰掛けると痛くなることが多いようで、夜間から朝方の痛みとの関連があるのかもしれません。治療は関節近傍のブロック注射が効果があります。また、この注射が効果あるようであれば、骨盤の安定を目指すコルセットの使用や、体操なども効果あると思います。

以上、ご質問の内容から推察しお答えしましたが、他にも内臓疾患由来の腰下肢痛、血管原性腰下肢痛など詳しい診察が必要な病気もあり、専門医の診察を受けられることをお勧めします。