公益社団法人 鳥取県医師会

質問

40歳女性。配電線や変電所からの電磁波によって、白血病、脳腫瘍、リンパ腫瘍の小児ガンが発生すると聞き、とても不安です。電磁波の人体への影響をわかり易く教えてください。

回答

1979年、アメリカで、高圧送電線近くに住む子供たちに白血病の発生率が高い、という研究報告がなされて以来、各国で数多くの疫学的、実験的研究成果が発表されております。疫学的には、送電線より生じる電磁界曝露と悪性腫瘍発生率の間に、関連性有りとするもの、無しとするもの、様々です。

中には、癌、脳腫瘍、小児白血病等の発生率が有意に高かったとする、信頼度の高い疫学研究も幾つかあります。しかし、それらにしても、その有意差は圧倒的なものでなく、除外すべき多くの環境因子等のからみもあって、関連性は認められるが原因として断定は出来ない、とされています。

これらの因果関係を立証するためには、生物学的実験研究による裏付けが必要なのですが、それを裏付けるような実験結果は、ほとんど全くと言っていい程得られていません。 　世界保健機関（ＷＨＯ）等々の内外の公的機関の検討委員会が、文献的検証を行った結果では、いずれも、環境中の電磁界が健康に有害であるという証拠は無い、との結論に達しております。1999年に終結した米国の国家的実験研究「ラピッド計画」の結果によっても、その見解は変わっていません。

しかし、疫学上の成果については、これを全く無視することは出来ない、としています。

現在、より一層の安全性の確立に向けて、ＷＨＯの「国際ＥＭＦ（電磁界）プロジェクト」が進行中であり、国内でも、国立環境研究所等が疫学調査への取り組みを進めているところです。