健康なんでも相談室

逆流性食道炎(胃食道逆流症)

回答者:  東部医師会員 正木忠夫

質問

78歳、女性。最近、胸やけがひどく、夜間など喘鳴があり痰もよく出ます。時には胸痛もあり食欲も落ちていますが、口腔からの出血などはありません。近医で逆流性食道炎と診断されましたが、胃は少し炎症を起こしているが、潰瘍など無く、心配ないと言われ、逆流性食道炎の薬を内服しております。現在食べ過ぎた時胸やけがしますが、症状は殆どなくなっています。この病気の起こり方など、もう少し詳しく教えて下さい。

回答

胃の粘膜から分泌された胃液(酸)が食道の方へ逆流しないように、食道と胃の境界部(噴門部)には噴門括約筋(下部食道括約筋)が収縮して閉まるようになっています。物を飲食して食道から胃の方へ行く時だけ、この括約筋が弛緩して胃噴門部が開くようになっています。

逆流性食道炎という病気は、この食道胃境界部の噴門筋の調節がうまくいかないため、胃液(酸)が食道へ逆流し、胸やけ、呑酸、咽喉頭異常感(喉のイガイガ感)などが起きます。食道粘膜の炎症、糜爛(びらん)、潰瘍などが原因です。胃液が喉元まで上がって来ると咽喉部の粘膜に急性炎症を起こしたり、肺を刺激したりするので、咳や咽喉部イガイガ感、気管支喘息などの原因ともなります。前述の逆流性食道炎を含めて、現在は『胃食道逆流症』と呼ばれ、食生活の欧米化(高カロリー、高蛋白、脂肪食)に伴い日本人の胃酸分泌は上昇傾向にあり最近とくに高齢者、女性に増えている病気です。しかも、高齢者では食道粘膜の知覚が低下しているため、重症にも拘らず無症状のことも多いのです。時には寝たきり老人が突然、吐血する例も見られます。

治療には薬物のみならず、生活習慣改善が重要です。禁酒、禁煙は勿論、肥満を予防し脂濃い食事を避ける、食べ過ぎない、食後すぐ横にならないなどです。薬は胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤やH2-ブロッカーと呼ばれている薬)で良くなりますが、稀にはこの薬の無効例や、重症例もあり、手術療法(内視鏡治療を含めて)が必要な場合もあります。