健康なんでも相談室

診察室では正常血圧なのに-仮面高血圧-

回答者:  鳥取県医師会監事 岸田剛一

質問

45歳、男性。高血圧の治療中です。診療所で測る血圧は、いつも正常範囲(140/90mmHg未満)です。しかし、家庭血圧計の測定では、収縮期血圧は150mmHg、拡張期血圧は100mmHg程度と上がっています。どうしたらよいでしょうか。

回答

診察室で測った血圧が正常でも、日常生活において高血圧が認められることがあります。これを正常血圧という仮面をつけた高血圧という意味で仮面高血圧と呼ばれ、最近話題になっております。かつて高血圧は、診察室で測る外来血圧だけで診断されていました。しかし家庭用血圧計の普及が進むにつれて、診察室では正常血圧だったのに、家庭で測ってみたら高かったというケースも多いことがわかってきました。

仮面高血圧に2種類の病態があります。1つは高血圧と診断されたことがなく、本人も気づいておらず、治療を受けていない高血圧です。住民の頻度は疫学研究で、9~14%と推定されています。もう1つは、降圧薬服用中の高血圧です。次の服薬時間まで降圧薬の効果が続かず、血圧が上がる病態です。とくに夜間・早朝高血圧が多いことから気づかれにくく、降圧薬服用中の患者の約2~3割にみられると考えられます。

仮面高血圧の問題点は、発見しにくく、放置された場合、脳卒中や心筋梗塞が起こり易くなることです。発見は家庭血圧を測定することで可能です。血圧測定のポイントは、もっとも血圧が高くなる起床1時間と、夜間血圧だけが高い人もいますので、就寝前に測ることです。降圧薬服用中は、服薬直前に測定し、薬効が持続しているか確認します。きちんと効いていない時は、医師に知らせて下さい。薬の効果が不十分な時は、持続性の高い薬に替える、のむタイミングを変える、のむ回数を変える、作用の違う薬を時間差で服用する、少量の利尿薬を追加する等で対処します。自分で勝手に行わず、医師に相談して、家庭血圧の正常値(135/85 mmHg以下)になるよう、対処法を考えていただきましょう。