健康なんでも相談室

術後の下肢のむくみ

回答者:  鳥取大学医学部第二外科講師 金岡 保

質問

54歳女性。平成5年、子宮がんで全摘術を受け、リンパ節郭清、コバルト照射も受けました。癌の術後経過は順調ですが、後遺症として大腿の高度な浮腫がおこり、パンパンに腫れて歩行にも差し支えます。外科と婦人科に通院し、弾性ストッキングをはき、足を高くして休むように努めていますが、他に治療法はないのでしょうか。

回答

子宮癌の手術やコバルト照射を受けた後、下肢の浮腫が発生します。これは術後リンパ浮腫と呼ばれ、骨盤内のリンパ管やリンパ節が障害され、下肢にリンパ液が貯留するために起こります。  治療には、マッサージ(用手、器械)、圧迫療法(弾性包帯、弾性ストッキング)、特殊治療(リンパ球注入療法、温熱療法)、リンパ管静脈吻合術があります。マッサージは治療の基本で、少なくとも朝夕行いましょう。腫脹部分を中枢側から末梢側に移動しながら行うことが大切です。圧迫療法は、下肢挙上と弾性包帯で腫脹を減少させてから強圧の弾性ストッキングで維持する方法です。高度な腫脹では入院が必要です。圧迫療法が導入できれば、就眠時以外は弾性ストッキングを装着し、就眠時には下肢挙上で夜間に腫脹を軽減します。多くは圧迫療法で生活を維持できます。その他、特殊治療や手術は、短期間は有効ですが、長期間の効果は難しいのが実状です。