健康なんでも相談室

花と小鳥の公園とオーム病

回答者:  鳥取大学医学部・ウイルス学教授 日野茂男

質問

32歳 女性。過日花と小鳥の公園に子供づれで遊びに行き、戻って3日目熱、全身の筋肉痛、咳や痰がありました。いま話題のオーム病に罹ったのかと案じられ、医院で受診しました。潜伏期や症状、検査所見からみて、その心配はないと言われ、病気も快くなりました。子供たちも元気です。これはどんな病気で、どんな風に予防すればいいのでしょうか。オームでない飼っている小鳥でも起きるのでしょうか。教えて下さい。

回答

オーム病の原因は、クラミジア シッタシ(Chlamydia psittasi)という細菌です。これは、鳥の菌で、オームに限らず、ニワトリやガチョウにも感染します。ウシやヒツジにも罹りますが、鳥以外の動物から人への感染は、まれです。感染後発病までの期間を潜伏期間といいますが、オーム病の潜伏期間は1週間程度で、訪問後3日目に起こった病気は、オーム病ではなさそうです。症状としては、突然の発熱、悪寒、頭痛などで、咳は出ても痰は少ないのがふつうです。X線写真で強い間質性肺炎が疑われるのに、呼吸に対する自覚症状は少ないのがふつうです。

オーム病の難しいところは、よく使われる抗菌剤のうち、クラミジアを殺す作用のないものがあることで、この場合には、かなりの率で死亡することです。抗生物質のなかった時代の致命率は20%近くだったようです。オーム病を疑い、テトラサイクリンやエリスロマイシン系の抗生物質を使えば、それほどおそれる病気ではありません。

オーム病クラミジアは、鳥にはかなり見られるもので、多数の鳥を飼う場所では、常に注意する必要があります。動物園などで新しい鳥の飼育を始めるときには、2~3か月の検疫を行うのが常識です。その後も、獣医さんがオーム病に罹った鳥がでないか注意し続けるのです。事件を起こした施設では、感染症に関する知識が決定的に欠如していました。予防法は、鳥に近づかないようにすることでしょう。ハトはクリプトコッカスという真菌を持っていることで有名です。