健康なんでも相談室

腰部脊柱管狭窄症はどんな治療をするの?-高齢者の腰の手術は安全か?-

回答者:  鳥取県中部医師会立三朝温泉病院長(整形外科) 森尾泰夫

質問

87歳の男性です。4年前から腰部脊柱管狭窄症と診断され仙骨硬膜外注射を受けていまが、しだいに効果もなくなりました。手術を希望しましたが高齢のためしてもらえません。最近は100m歩行すると腰から足がしびれて歩けず、休んでまた歩くという状態です。高齢の私のような患者にも出来る治療はありませんでしょうか?

回答

この病気は腰椎の加齢変化などにより腰椎椎骨を連結している椎間板と椎間関節が変性したため、腰椎の背中側にある神経の通路である脊柱管が狭くなり、腰から足へ向う神経(馬尾神経、脊髄神経)が圧迫され障害された状態です。

症状としては馬尾神経の圧迫により起立・歩行の動作でお尻から足までがしびれて、下肢の筋力が低下したり、膀胱機能障害(排尿遅延、頻尿,残尿)があらわれます。脊髄神経が圧迫されると障害された側の下肢(お尻から下腿)の痛みとしびれ感があらわれます。短い距離の歩行で休まないと歩けない症状(間欠性跛行)は典型症状です。

治療は消炎鎮痛剤、血流改善薬などの内服、硬膜外注射や神経根ブロック、コルセット装着、理学療法などがあります。日常の対策としては神経を圧迫する動作を避けることが大切です。前かがみの姿勢がお勧めです。歩く時は杖や歩行車を使ったり、自転車に乗る姿勢は楽になります。

100mの間欠性跛行があり日常生活に難渋しておられる様子からは手術治療(除圧手術)をお勧めします。手術は経験の豊富な脊椎脊髄外科専門医のいる病院で行えば安全に行えます。しかし高齢の患者さんは麻酔や手術の後での予期せぬ合併症の心配があるため,あらかじめ内科的に心臓、肺、腎臓などの機能を調べることが必要です。問題があればそれを治療しておけば合併症の危険は減ります。準備をしてのぞめば手術は可能ですので、もう一度先生に相談してみられてはいかがでしょうか。