健康なんでも相談室

脚のしびれと痛み―腰部脊柱管狭窄症の治療―

回答者:  鳥取大学医学部整形外科 永島英樹

質問

78歳の女性。2年前から両脚の痛みとしびれがあって、老人車がないと歩くことができません。医師の話では、高齢なので治らないと言われています。本当に治る方法はないのでしょうか。

回答

年齢や症状から考えると、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)による神経症状と思います。歩くと脚にしびれや痛みが生じて休まなければならなくなるというのが典型的な症状です。自転車や老人車による移動は問題ないというのも特徴です。

脊髄(せきずい)は、脳からの指令を腕や脚の神経に伝える電話線の束のようなもので、脊椎(せきつい)の骨でできている蛇腹(じゃばら)のような管(脊柱管)のなかに存在します。加齢現象により骨棘(こつきょく;いわゆる軟骨の棘)が腰椎にできて神経を圧迫し、しびれや麻痺をきたす病気が腰部脊柱管狭窄症です。

治療方法ですが、まずは手術以外の方法を選択します。痛み止めや神経を栄養する動脈の血行を改善する薬を処方します。電気治療などの理学療法の効果は証明されてはいませんが、効果がある人もおりますので、試みるのも一法かと思います。坐骨神経痛に対しては、硬膜外ブロックや神経根ブロックといった注射も有効です。

以上の治療でよくならなければ、次の選択肢は手術です。“高齢なので手術は無理”と考えている方がいますが、医学は進歩しておりますので心配は要りません。80歳代の方の手術は珍しくもなく、私は90歳代の方でも手術をしています。皆さん元気に退院しています。手術をすれば、脚の痛みは大部分の方でよくなりますが、しびれは残念ながら完全にはとれません。しかし、完全によくなったという方もいますので、高齢だからとあきらめずに担当医にお尋ね下さい。

 

図の説明
(“やさしい肩こり・腰痛・シビレの話:見松健太郎、河村守雄著:名古屋大学出版会”より引用)

 

図 腰部脊柱管狭窄症
A. 横から見た腰椎
①骨棘(いわゆる軟骨のとげ)②黄色靱帯(おうしょくじんたい)の肥厚③椎間板(ついかんばん)の突出により脊柱管が狭くなって神経を圧迫している。
B. 腰椎を輪切りにした図
④関節の骨棘により外側から神経を圧迫している。