健康なんでも相談室

脂質異常症治療-悪玉を下げ、善玉は上げる

回答者:  西部医師会員 面谷博紀

質問

高脂血症、高血圧症にて定期通院中の70歳代女性。最近は総コレステロールの値よりも、いわゆる悪玉コレステロールと善玉コレステロールの値のバランスを重視するといわれました。どういう意味か教えてください。

回答

総コレステロールやその中の悪玉の成分であるLDLコレステロールの値が“高い”ほど、狭心症、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発症率が増加することが多くの疫学調査で示されています。また善玉の成分であるHDLコレステロールの値が“低い”ことも動脈硬化の重要な危険因子であることがわかっており、最近話題のメタボリック症候群の診断基準の一つとなっています。したがって“高”脂血症という表現は適切でないという考えから、最近は脂質“異常”症という言葉が使用されるようになってきました。脂質異常症の診断基準や治療目標を示した最新版(2007年版)の動脈硬化性疾患予防ガイドラインによると、空腹時においてLDLコレステロールは140mg/dl以上、HDLコレステロールは40mg/dl未満、中性脂肪(トリグリセライド)は150mg/dl以上であると脂質異常症と診断されます。総コレステロール値は診断基準には含まれなくなっています。

高コレステロール血症に対する薬物治療を行う場合、一般的にはLDLコレステロールを管理目標値まで下げる(どこまで下げるかは患者さんの危険因子により異なります)ことが目標となりますが、最近、HDLコレステロールとのバランスが重要との報告がなされています。LDLコレステロール値とHDLコレステロール値の比をより低くする、すなわちLDLコレステロールを低下させるだけでなく、同時にHDLコレステロールをより上昇させれば動脈硬化病変を退縮させることができるという興味あるデータが示されており、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスを重視した脂質異常症治療が注目されています。