健康なんでも相談室

胸痛:カテーテル検査で異常なしとのことですが・・

回答者:  鳥取県立中央病院循環器科 坂本雅彦

質問

65歳の男性です。4年前から脳梗塞で通院治療を受けています。一昨年12月に2度胸痛があり、心臓カテーテル検査を受け異常なしとのことでした。昨年に入り月に3~4回、安静時に喉の奥から胸の上部にかけて十数分の痛みが続きました。心電図でも異常がなく、自律神経の異常からくるものだから心配は要らないと言われていますが、不安です。今後どのようにすれば良いでしょうか。

回答

胸の痛みをきたす病気には様々なものがあり、別表にまとめてみました。狭心症がご心配のようですが、狭心症とは心臓を養う冠状動脈の血流が低下して胸の痛みを生じる病気です。痛みの部位はほぼ胸の真ん中で、痛みの性質として「締めつける」あるいは「灼けるような」等と形容されます。狭心症には労作時に痛みを生じ、安静によりおさまる労作型と、安静時(多くは夜半から早朝にかけて)痛みが生じる安静型があります。狭心症は冠状動脈造影(心臓カテーテル検査)を行い、冠状動脈の狭窄を確認することが最終診断となります。

ご相談の方は冠状動脈造影で異常なしとのことですので、心臓以外に原因を求める必要があります。主治医の先生が自律神経の異常が原因だとの説明であれば、不安障害によるパニック発作の可能性が高いと考えます。これは、何らかの精神的な原因で、突然胸痛、動悸、息苦しさ等を訴える病態であり、胸部の症状を訴えて循環器科に受診される方の半分くらいを占めると言われています。パニック発作では生命にかかわることはありませんが、本人にはやっかいな病気です。自分で大丈夫だと自信を持つことが大切です。薬の助けをかりると楽になる場合もあります。主治医の先生によくご相談下さい。

表 胸痛の原因となる疾患
① 心血管疾患
・狭心症
・心筋梗塞
・解離性大動脈瘤
・大動脈弁疾患
・心膜炎
② 呼吸器疾患
・胸膜炎
・肺炎
・肺塞栓症
・気胸
③消化器疾患
・胆石、胆のう炎
・食道炎
・消化性潰瘍
④筋骨格系疾患
・肋軟骨炎
・肋骨骨折
・帯状疱疹
・肋間神経痛
⑤不安障害