健康なんでも相談室

胃の手術後の下痢

回答者:  博愛病院内科主任部長 浜本哲郎

質問

八十九歳の男性。体重四十キロ。昨年九月に初期の胃癌の手術を受けました。今なお胃腸の調子が悪く、一日、三ないし四回の下痢があります。痛みはありません。医院の薬を飲んでも治りません。何か良い方法はないでしょうか

回答

下痢や消化吸収障害は、腸の炎症や腫瘍によって生じるほか、膵臓などの消化腺の病気でも起こります。胃の手術を受けておられるようですが、胃の手術後には、食物を攪拌して胃液と混合、希釈し、これを胃から腸内に徐々に排出するという機能が低下します。さらに手術の方法によっては、食物と、膵液や胆汁などの消化液が、うまく混ざり合わずに消化吸収障害が起こることもあります。こういった場合には消化を補助する薬が有効です。胃の局所切除や部分切除では消化吸収障害はそれほど高い頻度で生じるわけではありませんが、胃を全部摘出した場合や、広範にリンパ節の郭清を行った場合には下痢はいっそう起こりやすくなります。

また、腹部の手術後には癒着による腸閉塞などの予防のために、便を軟らかくする薬を飲んでいただく場合があります。こういった薬は一人一人で効き方が異なるため下痢の原因となることもあり、薬の量の調節が必要です。そのほかにも、抗癌剤、抗生物質、消炎鎮痛剤なども下痢を起こすことがあるので、継続して内服している薬がある場合は主治医と相談するのがよいでしょう。

ご質問では初期の癌ということですので心配は無いと思いますが、癌が腹腔内に広がって下痢が起こることもあります。また、胃の手術と関係なく、腸の病気や膵臓の病気などが隠れていないとは断言できません。こういった可能性があれば、大腸の検査や、腹部CT検査なども考慮すべきです。また、精神的な因子で下痢が起こることもありますので、検査で異常が無いようでしたら、あまり考えすぎずに整腸剤や止痢剤を調節しながらしばらく経過をみるくらいの気持ちでいる方が良いかもしれません。

拝見したご質問のお手紙だけでは、胃病変の詳細な状況や手術の方法、現在の治療内容などが細部まではわかりません。まず、かかりつけの医院あるいは手術を受けた病院でよく相談してみるのがよいと思われます。