健康なんでも相談室

立ち仕事での脚の痛み 脚の血管が膨らんで瘤(こぶ)状―下肢静脈瘤―

回答者:  鳥取県立中央病院心臓血管呼吸器外科 森本啓介

質問

67歳女性。数年前から立ち仕事の時などに右下肢(主に膝から下)の痛みを感じていましたが、昨年夏から痛みがひどくなり最近では立ったり座ったりするのもすごくつらいです。膝から下の部分には血管が太く浮き出ており、瘤(こぶ)のように膨らんでいます。受診した整形外科では異常ないということでしたが、いかがなものでしょうか。

回答

下肢(脚)の血管(静脈)が瘤状に膨らんだ状態を下肢静脈瘤(じょうみゃくりゅう)といい、多くは曲がりくねっています。質問者の場合、これに該当すると思います。下肢静脈瘤は、立ち仕事の方や女性(特に妊娠出産経験者)に多くみられる疾患で、加齢とともに発生の頻度は増加します。症状は、前述した外観に加え、起立時の下肢痛、脚がつる、脚がだるいなどで、静脈内に血栓ができると炎症を起こして局所の痛みがひどくなったり、皮膚の色素沈着や潰瘍を合併することも少なくありません。発生のメカニズムとしては、大部分が皮下を走行する表在静脈(大小伏在静脈)の弁が壊れて血液の逆流が起こり、脚の下の方に血液が溜まることにより、静脈内の圧が上がって静脈が拡張して瘤が作られるということです。

治療法には、弾力ストッキングや弾力包帯による圧迫療法、手術療法、硬化療法などがあります。圧迫療法は軽症例では有用ですが、中等症以上では症状を少し軽減し進行を遅らせる程度で手術療法の補助療法と考えた方がよいと思います。手術療法には、静脈抜去術と高位結紮術がり、前者は一般的には数日の入院を要しますが、後者は短時間の手術で入院の必要はなく日帰りで行えます。ただ重症例では前者が薦められます。いずれの手術創も2~3センチのものが1~数カ所であまり目立たず、美容面でも喜ばれます。また硬化療法は静脈に硬化剤を注射するもので、単独でも奏効する場合もありますが、高位結紮と併用したほうが良い場合が多いようです。これらの治療法を病状、病態に応じて行うことにより、脚は軽く楽になり、外見上の瘤も目立たなくなることが多いです。

また、最近、エコノミークラス症候群(俗称)―深部静脈にできた血栓により肺梗塞を起こす、場合によっては致命的な疾患―が話題となっていますが、下肢静脈瘤がこれに関連している場合もまれにありますので、できれば血管外科のある病院を受診してみて下さい。