健康なんでも相談室

眼瞼痙攣に対するマッサージ

回答者:  鳥取赤十字病院神経内科部長 太田規世司

質問

67歳,女性.眼瞼痙攣(がんけんけいれん)にて近くの神経内科病院で4ヶ月に1回の割合でボットクス注射をしています.瞼(まぶた)が閉じてしまうのです.注射後4ヶ月目が近づけば閉じる回数も頻繁になります.少しでも開眼していられるような軽いマッサージや体操のようなものがあればしたいのですが,教えて下さい.

回答

-残念ながら本質的治療ではないので,ボツリヌス注射と合わせて補助的に-

眼瞼痙攣は顔面の筋肉に出現するジストニアとよばれる不随意運動の一種で,50~60歳代の女性に多い傾向がある疾患です.

頻度は人口10万人に5人程度で,原因はよくわかっていませんが,大脳基底核(だいのうきていかく)の機能的異常ではないかと考えられています.ほとんど眼が開けていられなくなると機能的には失明の状態となり,日常生活や社会生活に大きな障害を引き起こすこともあります.

眼瞼痙攣に対しては,従来から抗コリン剤などによる薬物療法が行われてきましたが著効を呈することは少なく,それらを補助する位置づけとして自律訓練法やバイオフィードバックなどが行われてきました.しかしいずれも試行錯誤的に行われることが多く,有効性については一定の見解が得られていないのが現状です.ご質問のマッサージや体操も残念ながらこの位置づけになります.当院に通院中の方の中にも顔面をマッサージすると少し調子がよいと言われる人がありますが,決まったやり方があるわけではなく,その効果も限定的なものです.されるとしたら眼のまわりの筋肉をリラックスさせるような輪状マッサージが良いかと思います.

ボツリヌス(ボトックス)注射はわが国では1997年に導入された新しい治療法で,食中毒でも知られるボツリヌス菌の毒素の筋弛緩作用を利用しており,90%近い患者さんで有効であるとされています.質問の方は幸いにもこのボツリヌス注射で症状の軽減がみられているようです.通常注射後3~4ヶ月程度効果が続きますので,4ヶ月程で注射の効果が減弱しているのは標準的といえます.ですから,やはりご面倒でも次の注射を検討すべきかと考えます.この病気は難治であり,一部の重症例では手術による治療も行われることを付け加えておきます.

また,マスクをする,片眼をつむる,眉毛部をおさえる等の動作で軽快し快適になることもあり,参考にしてみて下さい.