健康なんでも相談室

痔核の新しい治療法

回答者:  鳥取県医師会理事 米川正夫

質問

64才の女性。20数年前から痔が悪く、一度手術を受けました。このごろ、肛門の周りが固くなり出血するようになってきました。座薬や軟膏で治療していますが、手術をした方が良いのでしょうか?

回答

日本人の3人に1人は一生のうちに一度は痔疾患にかかると言われています。痔核(じかく)、裂肛(れっこう)、痔瘻(じろう)の3大疾患がありますが、痔核が過半数を占めています。軽症なら、軟膏や内服薬、生活習慣の改善などで直りますが、進行してくると手術が必要となります。日帰りや短期入院で手術を行うところも増えてきましたが、一般的には1~3週間の入院が必要とされ、肉体的な負担に加えて、経済的な負担もあります。そのため手術以外にも、いろいろな治療法が開発されてきました。

その中の一つに痔核の注射療法があります。最近、脱出するほどひどくなった内痔核を硬化退縮させ、主症状である脱出と排便時の出血を消失させる局所注射剤が開発されました。局所への注射で痔核への血流を遮断し、無菌性の炎症を起こさせ痔核を効果・退縮させます。実際の治療法は、麻酔を施したあと患部の4カ所に注射します。注射に要する時間は15分で、患部に適切に注射された場合は投与後の痛みもほとんどなく、日帰りもしくは1~2日の短期間の入院で済みます。臨床試験の結果、「手術に匹敵する高い有効率」が得られました。ただ、1年後の再発率が約10%くらいでした。

しかし、注射の部位を間違えると、ひどい痛み、肛門の壊死、狭窄といった合併症を引き起こします。また適応となる症例も限られるので、すべての肛門科で受けることはできません。きちんと講習会を受け認定された肛門専門医のみで治療を受けることが出来ます。