健康なんでも相談室

気になる「ふるえ」-多様性と原因-

回答者:  中部医師会員 新田辰雄

質問

56歳女性。以前より、手を軽く広げると指が小刻みにふるえます。緊張時や、字を書く時にはふるえが目立ち、脳卒中の前ぶれではないかと心配です。

回答

「ふるえ」を専門的には振戦(しんせん)と言います。振戦は不随意運動の一つで、日常よく見られます。筋肉の短い収縮が規則的にくり返され、収縮の大きさと速さに多様性があります。ふるえの出現の仕方により分類され、力を抜いた状態で見られる「静止振戦」、手などを一定の位置に保持した時に出現する「姿勢振戦」、何かの運動をする時にみられる「動作性振戦」などがあります。

代表的なものについて説明します。「本態性振戦」は姿勢振戦をきたし、指先を広げた時や、手先の細かい動作をする時に手指がふるえます。ふるえはやや大きく、持続性があります。精神的緊張で増強し、アルコールや鎮静剤で軽減します。このふるえには特別な原因はなく、心配はないと思いますが、症状が強く日常生活で困る場合は治療が必要です。「生理的振戦」は本態性振戦よりふるえが細かく、疲労時、感情的興奮時などに一時的に見られるものです。健康な人にも見られる良性のふるえで、特に治療の必要性はありません。今回ご質問のふるえは本態性振戦が疑われます。

パーキンソン病はふるえをきたす代表的疾患で、静止振戦が特徴的です。手のふるえ、体が硬く動作が遅い、歩行が小刻みなどの症状があればパーキンソン病が疑われます。脳内の神経伝達物質と関連があり、有効な治療薬が次々と開発されています。「企図振戦」は、動作性振戦の中で、動作の終わりに近づくとふるえが著明になるもので、小脳性の運動失調と関係があります。人差し指を鼻に近づける動作では、鼻に近づくと振戦が出現し増大します。このふるえやパーキンソン病が疑われる場合は、神経内科などを受診して下さい。

内科疾患では、甲状腺の病気、アルコール中毒、肝硬変、尿毒症などで振戦を認めます。