健康なんでも相談室

手の汗の悩みは内視鏡手術で解決できます!

回答者:  鳥取大学医学部附属病院胸部外科 中村廣繁

質問

32歳 女性。学生の頃から多汗症で悩んでいます。多汗症を完全に治す方法はありますか?

回答

手の汗が多くて悩んでおられる方は最近増えておられます。そもそも汗には体温上昇を発散させるために必要な温熱発汗と、神経の緊張や興奮から生じる精神発汗があります。手の汗が多い人は精神発汗が多い状態で、誰もが過緊張や恐怖により手に汗握る体験をしたことはあると思いますが、これが常時続くようになった状態と考えられます。手の汗の程度を表に示しました。

では、何故汗が多くなるのでしょう?原因は定かではありませんが、多分に現代のストレス社会の影響が大きいと考えられています。手の汗は思春期より次第に悩みとなり、スポーツ、学業に支障を感じるようになり、中には内向的性格から積極的な行動を躊躇することにもなりかねません。個人差は多いと思いますが、社会生活においても絶えずハンカチ・タオルが手放せないことが多いでしょう。手の汗の調節は胸部交感神経が関与しています。近年発達した内視鏡はこの部位への到達を容易にし、われわれは3mmの細径スコープと5mmの操作孔を用いて手術を行っており、創痕もほとんど気になりません。

手術は約1時間で入院期間は3~4日間です。手術直後より手の汗は確実に停止もしくは減少します。しかし、手術を受ける上で知っておかなければならないのは代償性発汗といわれる体幹部位(胸腹背部、大腿部)への発汗増加です。これは程度の差はあれ全例に必発で、温熱発汗が増加する夏には特に要注意です。元に戻すことは困難ですが、手の汗と比較すれば苦痛は軽微のようです。本手術は腋窩多汗、赤面症、レイノー病などにも適応があり、私自身もこれまで約50人の手術を行ってきましたが、高い満足度が得られています。薬物治療では本疾患の完治は困難です。内視鏡手術は高度技術ですが、専門病院では種々の工夫がなされており、安全に受けられますので、是非ご相談されることをお薦めします。

レベル1 :湿っている程度。触ると汗ばんでいるのがわかる。水滴はできないが、光を反射して汗がキラキラと光っている。

レベル2 :水滴ができて、濡れている状態。だが、汗がながれるところまではいかない。

レベル3 :水滴ができて、汗がしたたり落ちる。