健康なんでも相談室

手のひら足の裏の汗・限局性多汗症-温熱性発汗と精神性発汗-

回答者:  鳥取大学医学部皮膚科助教授 石原政彦

質問

小学校4年生、男子の父親。息子が少年野球をやっていて、去年から真夏になると頭と手のひら、足の裏によく汗をかくようになりました。そして手・足の皮がむけてくるのですが、秋から春にかけては問題がないようです。小児科の先生に診てもらったら精神的なものだから大きくなったら治ると言われました。何とかならないでしょうか。

回答

皮膚において汗を出すところは汗腺という器官です。この汗腺は分泌の形態よりアポクリン腺とエクリン腺に分類されます。アポクリン腺は腋窩・陰部など多毛部位にたくさんあり、思春期になると活発となり主として匂いのある汗を出します。これに対しエクリン腺は全身に広く分布し、およそ250 万~500 万個あると推定されています。そして、ここから汗を出すことによって体温を調節したり体液の調節、老廃物の排泄、皮膚表面のpHや湿度を保つ働きがあります。

汗を調節する司令は皮膚にくる交感神経が行います。(図)そして汗を出す司令は、温熱性と呼ばれる体温の上昇や精神性と呼ばれる緊張状態で出されます。
この際、手のひらや足の裏などの毛のない部位は精神性発汗が主体となり、頭・顔・体などの毛のある部位では温熱性発汗が主となります。

今回の質問の内容よりは、夏の暑い季節に野球という野外スポーツをやっておられるので体温の上昇に起因する発汗つまり温熱性の汗が生じているものと思われます。この反応自体は全く正常なものですので、あまり心配することはありません。ただし、その後に生じてきている手・足の皮がむける状態は、やや病的なものであり、異汗症という軽い湿疹の状態であると思います。

一般に、手のひらや足の裏の著しい発汗は、精神的に緊張するとひどくなります。
これは季節とは無関係に生じ、みるみる滴り落ちるように汗が噴き出してくるようなひどい状態の方もみられます。このような場合、一般的な治療法つまり局所への制汗剤の外用、精神安定剤・抗コリン製剤・三環系抗うつ薬の内服などでは難渋することが多いようです。

最近では電気泳動法で汗の腺を塞いだり、胸・腰部交感神経節ブロックさらに経皮的な胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術が行われるようになりました。これらのやり方ですとかなり効果が期待できますが、どの段階の治療法がよいのかは個人差があります。まずはもよりの皮膚科専門医に相談してみてください。