健康なんでも相談室

心臓弁膜症(大動脈閉鎖不全症)の手術適応-無症状なのに手術は必要か?-

回答者:  鳥取県立中央病院心臓血管外科 谷口 巌

質問

65歳の女性。風邪で受診した時、胸部レントゲン写真にて心拡大を指摘され心カテーテル検査を受けました。結果、大動脈弁閉鎖不全症と診断され早急に開心術が必要と指摘されました。現在、全く自覚症状はなく元気に働いているのに手術は必要でしょうか。また、手術費用についてもお教え下さい。

回答

心臓には4カ所に弁があり、一方向のみに血液を流しています。このうち、全身に血液を送る大動脈と心臓の間にある大動脈弁が壊れて大動脈から心臓に血液逆流が起きることを大動脈弁閉鎖不全と言います。送り出した血液が再び心臓に逆流するので心臓は逆流分も含めて無駄に大量の血液を拍出することになり過剰な負荷を受け障害を起こします。

原因はたくさんあるのでここでは申しませんが多くは慢性に経過し長く無症候の期間があります。弁の障害に心臓はよく対応できるので自覚症状がでる前に心臓は著明に拡大し心機能の低下が起きてきます。心機能低下が不可逆になってからの手術では術後回復も術後長期の心機能も不良となります。症状の有無のみでなく、心機能を正しく評価して手術時期の決定が必要です。心カテーテル検査を受けて早急な手術を勧められたとのことですから正確な指標を得た上での判断だと思います。

手術は人工心肺を使用して、弁の修復もまれには行われますが、多くは人工弁置換術になります。安全な手術ですが、ごくまれに起きる脳梗塞、心筋梗塞などは重大な合併症で生命の危険もあります。手術時期とともに合併症についても主治医と十分に話し合って決心して下さい。手術費用は入院期間にもよりますが500万円前後必要です。保険により実際の支払いはその3割で、且つ、高額医療費返還の手続きにより1ヶ月単位で8万円未満を除いてほとんどが返還されます。詳しいことは病院でお尋ね下さい。