健康なんでも相談室

尺骨神経管症候群―手をよく使う仕事で起こりやすい―

回答者:  鳥取県医師会理事 石田浩司

質問

30歳代、男性。仕事は事務職で、時々野球でピッチャーをしています。3ヶ月前より、右手薬指のしびれが出現し、整形外科を受診したところ、レントゲン・筋電図・血液検査等では異常なく、神経が圧迫されているのでしょうと言われています。神経の腫れをとる注射を受けましたが、まだ掌の手首から薬指にかけての痛みがあります。どのような病気が考えられますか。

回答

尺骨神経管症候群が考えられます。これは、尺骨神経(前腕から手の小指側を走っている神経)が手根部尺側(小指側)で圧迫を受けて生じる神経障害です。尺骨神経の知覚枝が圧迫を受けると小指や薬指の知覚障害(しびれや痛み)を起こし、運動枝が圧迫を受けると指の運動障害や筋萎縮による指の変形を起こします。鑑別すべき疾患として、肘部管症候群・頚椎症・胸郭出口症候群などがあり、これらを合併する場合もあります。

原因はガングリオン(硬性滑液腫;手くびなどにできやすい、害のない腫瘤)と外傷が多く、外傷としては、手根部の直接打撲・手関節付近の骨折のほか、慢性の小外傷として、手をよく使う職業やスポーツがあります。質問者の場合、事務仕事や野球が誘因ではないでしょうか。

診断として、小指や薬指の知覚障害(しびれや痛み)が手掌側だけで手背側にはないことがあげられ、手根部尺側の叩打や手関節の強い屈曲によるしびれ感の増強がみられることも有用です。X線・MRI・神経伝導速度検査も参考になります。

保存療法として、患部の安静や保護・ビタミンB12や消炎鎮痛剤の内服・ステロイド剤の注射などが行われます。保存療法が無効の場合や腫瘤・骨病変の存在が明らかな場合は手術療法が勧められます。