健康なんでも相談室

女性ホルモンとがん-エストロゲンの影響-

回答者:  鳥取県医師会監事 井庭信幸

質問

女性ホルモンの分泌と癌の好発年齢を教えてください。閉経後はエストロゲンの分泌が少なくなると思いますが、乳がん・子宮がんへ罹患する割合は閉経前と比較して低くなるのでしょうか。

回答

女性ホルモンは卵巣から産生されるエスロゲンとプロゲステロンがあります。

エストロゲンは思春期頃から卵巣で産生され、その結果、乳房の発達や皮下脂肪の増加などでいわゆる女性らしくなり、次第に排卵を伴う月経周期が確立されてきます。

エストロゲンは乳房の発達には重要な役割を果たし、子宮に対しては子宮内膜を増殖させる作用があります。排卵を伴う月経が始まりますと、極端にいえば乳房、子宮は閉経までエストロゲンにさらされていますので、何らかの原因でエストロゲンが過剰生産されるとがん発生に関係してくる事があります。

乳がん発生とエストロゲンは密接な関係があります。乳がんはエストロゲンが産生されている間はどの年代においても発生しますが、好発年齢は一般的には35歳台~55歳台といわれています。もちろん若年者、閉経後でも発生します。閉経後はエストロゲン分泌が少なくなりますので、乳がんの発生は少なくなってきます。

子宮がんには子宮頚部がん、子宮体部がん(子宮内膜がん)があります。

頚部がんの発生とエストロゲンとの因果関係は明確ではなく、大きな原因の一つとしてヒトパピローマウイルス(HPV)があり、性交渉で感染します。好発年齢は35歳~55歳で、閉経後は減少してきます。最近は若年者に多くの報告があります。

子宮内膜はエストロゲンの影響を受けて増殖しますが、妊娠しなければ脱落し、月経血と共に排出されます。中には異常増殖して体部がん(子宮内膜がん)になる事があります。エストロゲンとの関係は重要であり、好発年齢は40歳~50歳台ですが、閉経後の不正出血は体部がんが疑われます。更年期のホルモン補充療法、経口避妊薬、乳がん治療のため使用される一部の薬を服用している人はエストロゲンの長期服用により子宮内膜増殖や乳腺組織の増殖で中には体部がんや乳がんになる事があますので、注意しなければなりません。子宮がんは細胞診・コルポスコピー・超音波などで、乳がんはマンモグラフィーで比較的簡単に発見する事ができます。がん検診は毎年受けてください。