健康なんでも相談室

夜間頻尿 ―まずは排尿日誌―

回答者:  鳥取県立中央病院泌尿器科 渡邊健志

質問

67歳男性.持病として,軽い脳梗塞,動脈硬化症などがあります.半年位前から,夜になると1時間毎に尿意を感じ,トイレに起きます.排尿回数が多いため熟睡できません.尿の勢いは良い時,悪い時がありますが,良い治療法はないでしょうか?

回答

夜間頻尿は,多くの高齢者を悩ます代表的な蓄尿障害のひとつです.しかし,いろいろな病因が絡みあっているため,治療法も一つではありません.夜間頻尿の原因は大きく分けて,夜間多尿,膀胱容量の減少,睡眠障害の3つが挙げられます.

夜間多尿は,加齢に伴う抗利尿ホルモン(尿の産生を抑制するホルモン)の夜間分泌能の低下や,多飲などが原因です.特に最近では,睡眠前に水を飲むことを推奨するTV番組が多いためか,多飲多尿の方が多く見受けられます.眠前の飲水が悪いわけではありませんが,飲んだ分だけ排尿回数が増えることも認識して置かなければなりません.

膀胱容量の減少には,いろいろな原因があります.加齢のため膀胱が硬くなる場合や膀胱が過敏になる不安定膀胱,脳梗塞などによる神経因性膀胱,また高齢男性では前立腺肥大症による夜間頻尿などが考えられます.トイレまで間に合わないような頻尿には抗コリン剤などの頻尿治療薬が有効です.また,睡眠障害による夜間頻尿には睡眠薬や精神安定剤などが有効です.

相談者の既往歴からすると,前述の神経因性膀胱や睡眠障害,また年齢的に前立腺肥大症の併存も疑われます.できれば3日間程,排尿日誌をつけることをお勧めします.方法は,朝から次の日の朝までの排尿した時刻と排尿量を記録します.排尿量は計量カップなどを用いれば簡単に測れます.排尿日誌により,夜間頻尿の原因がより明らかになります.この排尿日誌を持って,泌尿器科を受診してみてはいかがでしょうか.