健康なんでも相談室

境界型糖尿病-糖尿病予備軍でも油断は禁物-

回答者:  鳥取県医師会常任理事 天野道麿

質問

58歳の女性です。健康診断で血糖値の異常を指摘され、近医にてブドウ糖負荷試験を受けたところ境界型糖尿病と診断されました。現在、特に自覚症状なくこのまま放置しておいても心配ないでしょうか。

回答

糖尿病は、血糖値が正常域から境界域になって、それから糖尿病域へと進行して起こります。早朝空腹時血糖値が110mg/dl未満なら正常域、110~125mg/dlの間が境界域、126mg/dl以上なら糖尿病域です。ブドウ糖負荷試験では、2時間値が140mg/dl未満なら正常域、140~199mg/dlの間が境界域、200mg/dl以上が糖尿病域です。

厚生労働省が平成14年に行った糖尿病実態調査によると、糖尿病予備軍(境界域)は約880万人と推定されています。血糖値は毎日同じ値でなく、食事の内容や運動量、ストレス、睡眠不足、発熱などでかなり変動します。従って、1回の血糖検査で判定するのは困難で複数回の検査が必要となります。

ご質問の境界型糖尿病ですが、これを放置しておれば、やがて糖尿病域の方へ徐々進行します。「糖尿病は病気だが、境界型糖尿病は糖尿病の予備軍で病気ではない」と思うのは間違いです。境界型糖尿病のリスクとしては、心血管疾患を起こしやすいことです。ブドウ糖負荷試験の2時間値が140~169mg/dl程度でも動脈硬化症が進展してきます。その結果、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞が発症しやすくなります。従って、境界型糖尿病だからといって油断は禁物です。心血管疾患は「現在のリスクである」、神経障害、網膜症、腎症等は「糖尿病の将来のリスクである」と思って下さい。

以上のことより、境界型糖尿病の時期から食事は腹7~8分目とし、肥満があれば、肥満の是正をし、運動習慣を身に付け、ストレスも血糖値を上げますので、趣味を生かしてストレスの解消をはかることが大切です。