健康なんでも相談室

地震を契機に指摘された高血圧―生活習慣の修正で降圧薬中止は可能―

回答者:  東部医師会員 松浦喜房

質問

91歳、男性。毎年健診を受け悪いところ無く来ましたが、西部地震頃から不整脈が烈しく欠滞等があり、病院で血圧が高いと言われ、一日一錠の薬(アムロジピン)を貰い一ケ月以上になりますがあまり変化はありません。この薬は元気になっても続けなければいけないでしょうか。

回答

地震は強い心身のストレスを引き起こすことがあり、寒い時期はなおさらです。脈の欠滞はおそらく期外収縮という不整脈と思われますが、この他、心身の過労や寒冷はしばしば狭心症や高血圧の原因となります。阪神淡路大震災においても血圧上昇が認められたと報告されていますが、その持続期間は報告者により様々で、ストレスの強さ、環境、高血圧素因が関係していたと思われます。

一般的に高齢者では、動脈硬化により大動脈の伸展性が低下するために収縮期血圧が上昇することが多く、脳梗塞や心筋梗塞の強いリスクとなっています。一方、高血圧治療によるこれらの発症抑制効果は明らかとなってきています。治療の第一段階として生活習慣の修正が重要で、これには減塩食(特に加工食品の制限)、可能な範囲で歩くこと、節酒および禁煙、十分な暖房や防寒、熱すぎない風呂、便秘予防等が含まれます。降圧薬は特に高齢者では一日に一回服用する長時間作用型の薬を低容量から開始し、三ケ月以上かけて目標血圧に到達することを目指すのが望ましいとされています。アムロジピン等のカルシウム拮抗剤は、それらの条件を満たす薬剤の一つで、狭心症の予防にも有効です。高齢者は個人差が大きく、暦年齢より生理的年齢が重要ですが、高血圧学会のガイドラインでは八十歳代の場合、収縮期血圧一六〇~一七〇以下、拡張期血圧九〇未満を目標とする方針です。降圧薬治療は生涯継続しなければならないことが多いのですが、前述した生活習慣の修正により、薬を中止することも可能なことがあります。中止の時期については主治医の先生に相談して下さい。