健康なんでも相談室

動脈硬化で下肢切断

回答者:  山陰労災病院心臓血管外科 黒田弘明

質問

96歳の伯母。3年前に脳梗塞で左半身麻痺、昨年下肢動脈硬化のため左足の趾(ゆび)を2本切断し、最近他の趾と右足の趾にも壊死が拡がり、痛がります。主治医からは両足とも太股(ふともも)で切断する必要があると言われました。切断以外に方法はないのでしょうか。

回答

下肢の動脈硬化が進行すると動脈の内腔は狭くなり、やがて詰まってしまいます。このため血が流れなくなり(虚血)、最終的には組織は死んでしまいます(壊死)。壊死組織は感染や、耐え難い痛みの原因となるため、取り除かなければなりません。閉塞部位や範囲、側副血行(そくふくけっこう)の発達具合により切断部位には差がでてきますが、太股での切断も少なくありません。血流の良い部位で切断しないと、切断した傷が治らないからです。伯母さんの場合、臍の辺りから足側の太い動脈がすべて閉塞していると推測されます。

血流を良くしてから切断することもあります。その方法として薬、血管内(カテーテル)治療、手術などがありますが、いずれにも限界があります。骨髄細胞や遺伝子を使った先端医療がある一方で、今でもウジ虫を使った古典的な治療も行われています。切断しないためには、やはり予防と早期発見、早期治療が大切です。初期には足の冷感、しびれを、次の段階では歩行時の下肢(特にふくらはぎ)の痛みやだるさが出現します。その次には安静時にも足が痛くなり、最終的には足先や踵(かかと)などの皮膚潰瘍や壊死を生じます。いずれにしても足(甲やくるぶしのうち側)の動脈の拍動は触れにくくなります。日頃から自分で足の脈が触れるかをみておくと役に立つと思います。ご心配な方は専門医に相談して下さい。