健康なんでも相談室

入院きっかけに認知症?

回答者:  鳥取県東部医師会員 渡辺 憲

質問

 85歳の祖母です。年末に骨折し1か月ほど入院、退院してすぐ腰の圧迫骨折でまた10日ほど入院しました。入院中もせん妄症状がありましたが、退院してから急に認知症の症状が現れました。お薬の治療も始まりました。入院をきっかけに認知症が発症し、進むことがあるのでしょうか?

 

 

回答

 環境変化で病理が加速

 

 一般に、高齢の方で、肺炎、骨折等で入院した際に、認知機能の衰えが急に現れることがよくあります。 これは、入院が原因で急に認知症を発病するわけではなく、肺炎等の全身の炎症性疾患、骨折等の疼痛、さらに入院という大きな環境変化等によって、心身に大きなストレスがかかることで、ゆっくり進みつつあった認知症の病理が急激に加速することによると考えられています。高齢になり、認知症としての脳の病理がゆっくり進んでいても、住み慣れた環境の中で毎日安定した生活が維持できていれば、弱り気味の脳内の神経のネットワークは働き続けることができるわけですが、大きな病気、強い精神的ストレスをきっかけとして神経系のバランスが大きく崩れ、認知症としての症状が顕在化すると考えられています。 お祖母さんの場合、認知症としての病状がみられ、お薬の治療も開始されているようですので、引き続き、落ち着いたお気持ちで毎日規則正しい生活を送っていただき、趣味(絵画)の活動もゆっくり再開し、運動機能回復の後は外出なども介助して行っていただくなど、少しずつ今までの活動的な生活に近づけてあげることが大事と思います。また、ご家族だけでは支援しきれないところは、介護保険の在宅サービスを利用することも有用です。