健康なんでも相談室

働き者の勲章です- 余分な痛みは和らげましょう -

回答者:  鳥取県医師会理事 明穂政裕

質問

71歳の男性です。定年まで運送業に従事し、重い物を肩と首で支える仕事をしていました。肩は、右の肩を特に使っていました。20代から肩が凝り、寒い時期でも肩に負担がかかるため軽いオーバーで過ごしました。40代後半より、整形外科で首を引っ張る、注射、薬の投薬などの治療を受けた他、整体へも通いましたが回復しませんでした。車の運転時、バックしたいときなど首が回りません。最近では肩から手の指先まで痺れ、痛みも伴います。現在、整形外科と内科へ通院していますが、凝りと痺れは1日中あり、特に寝起きがひどいようです。血圧もやや高めです。肩の凝りと手の痺れが取れる方法がありませんか。

回答

この男性の自覚症状から、肩関節周囲炎(五十肩)より肩から指先までの痺れを訴えておられることより頚椎症性神経根症が最も疑われます。この病気は“脊柱の周囲で神経が変形した頚椎や椎間板ヘルニアにより圧迫されて症状の出現したもの。頚部・背部・肩・上肢など局部の関連痛に伴って、その神経の支配領域に感覚および運動麻痺をきたしたもの”と定義されています。さらに頚部の動きが制限され、首や背中の筋肉も硬くなる症状が9割位に認められたとの報告があります。神経の圧迫が原因であることより、手術が必要な場合もありますが、幸いなことに8割は手術以外の保存的治療が有効です。先ずは鎮痛消炎剤の内服や外用、さらに筋弛緩薬、ビタミンB製剤そして漢方薬が加えられることもあります。そしてこの方にはあまり役立たなかった頚椎間歇牽引療法も広く知られています。併せて頚椎装具の装着も有効とされています。

以上の第一選択とされる治療を一定期間行って効果が得られなければ、神経ブロック療法(トリガーポイント注射・頚部神経根ブロック・硬膜外ブロック)が治療としてあるいは障害部位の診断の手段として加えられ、さらにエックス線検査で原因が不明瞭であったならMRI検査を行い、どこで、何によって神経が圧迫されているのかを画像診断により調べ最後の選択となる手術の適応があるかどうかの検討も行います。長年のお勤めご苦労様でした。原因をつきとめて1日も早く痛みより解放されご自分にご褒美をあげてください。