健康なんでも相談室

何度も円形脱毛症に―治療期間は長引きがち―

回答者:  鳥取県立中央病院皮膚科 河上真巳

質問

30代、女性。5年前に初めて円形脱毛症になったのですが、その後も再発し、2年前には全毛脱毛症になりました。そして再び円形脱毛症が発症し、何か病気が原因ではないかと心配です。ストレスも要因の一つと考えていますが、何度も発症するのが不安です。持病はありません。原因と治療法についてお教え下さい。

回答

円形脱毛症は脱毛巣が①1ヶ所だけの単発型 ②数ヶ所の多発型 ③頭髪全体が抜ける全頭型 ④眉毛をはじめ全ての体毛が抜ける汎(はん)発型 に分類されます。10円玉大程度の単発型についてはよく見られ、特に加療しなくても数ヶ月で自然治癒することも多いですが、さきほどの分類の後者になるほど治療に難渋するケースが多くなります。

病因としてストレス説、自律神経失調説、自己免疫説などが挙げられますが、現在のところ、自己免疫説が最も有力です。すなわち、何らかのきっかけにより自分自身のリンパ球が毛に対して攻撃することで脱毛が起こるという考え方です。自己免疫説の根拠として、他の自己免疫性疾患との合併する症例があること、ステロイド剤や免疫抑制剤で治療効果が得られることなどが挙げられます。とくに③④のケースで治療に抵抗するものは、甲状腺疾患や膠原病(こうげんびょう)など自己免疫疾患の合併がないかどうか調べるのに血液検査が必要な場合があります。

治療は、①については毛細血管拡張剤の外用 ②についてはさらに、ステロイド外用剤、セファランチン(ある植物から抽出したアルカロイドという成分で、毛の根元の細胞の分化を助ける働きがある)内服を追加 ③④についてはそれらの治療に抵抗するケースも多いですが、局所免疫療法という治療が有効なことがあります。それはDPCP、或はSADBEという人体に安全な感作物質を、弱いかぶれの皮膚炎を生じる程度の濃度で1、2週間に1回、脱毛部に塗布する治療です。円形脱毛症は一般的に治療期間が長引きがちで、重症の場合、社会生活に支障をきたすこともありますので、最寄の皮膚科医に相談され、適切なアドバイスを受けていただくようお勧めします。