健康なんでも相談室

ノロウィルスの予防-手洗い徹底、汚物に注意-

回答者:  鳥取県医師会理事 笠木正明

質問

8歳の男児。嘔吐と下痢があり「腸感冒」と診断されました。「ノロウイルスが原因かもしれない」と言われましたが、家族にうつらないか心配です。家庭でどのように予防したらよいのでしょうか。また、学校はいつまで休まないといけないのでしょうか。

回答

俗に腸感冒といいますが、正式には感染性胃腸炎といいます。感染性胃腸炎の原因には、病原性大腸菌やサルモネラなどの細菌性のものと、ロタウイルス・ノロウイルスやアデノウイルスなどのウイルス性のものがあります。一般に、細菌によるものは夏期に、ウイルスによるものは秋から冬にかけて流行を認めます。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の潜伏期間は平均1~2日です。迅速な検査方法はなく、主な症状は、嘔吐・下痢・腹痛と発熱です。症状の程度には個人差があり、無症状の例もあります。嘔吐などはほぼ1~2日で治癒し、一般的に経過は良好ですが、脱水症状がひどくなり輸液が必要になることもあります。特効薬はなく治療は対症療法が主です。元気になり症状が改善しても1~数週間程度は便中にウイルスが排出しているといわれています。

ノロウイルスの感染経路としては、嘔吐物や便中に含まれるウイルスが手指を介して口に入り、人から人への感染をしたり、吐物の飛沫から感染する場合もあります。また、汚染された水や食品からの感染があります。食品を介して感染すれば食中毒となります。集団生活をする場所で発生した場合、集団感染になることがあります。

家庭での予防については、普段から排便後や調理前には石けんと流水での手洗いを徹底するようにしておき、タオルの共用を避けることが必要です。また、十分な睡眠と栄養を取るようにして体調を良好に保つようにしておくことです。ウイルスは加熱すると死滅しますので、食品の生食はせず、食品の中心温度が85度以上1分間以上の加熱をするようにして下さい。また、玩具、衣類、調理器具・食器類は熱湯、煮沸消毒や熱水洗濯を行うと安心です。吐物にもウイルスが存在し、乾燥して空中に舞う場合がありますので、便や吐物の処理をする時は、乾燥する前に使い捨てのマスクとビニール手袋を使って処理してください。汚物の消毒で効果があるのは家庭用の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)です。

学校での出席停止解除のめやすは「下痢・嘔吐が回復し、全身状態が良好になったとき」ですが、個人差がありますのでかかりつけ医と相談して決めて下さい。